2023年1月20日、厚生労働省は2023年度の公的年金額を公表し、3年ぶりの増額となることがわかりました。

2023年4月~5月分の年金は6月15日に支給されるため、今日が2023年度分の初回支給日となります。

ただし、昨今の物価上昇には追いつけていないため、実質の「目減り」となるのが現状です。

公表された2023年度の年金額や、夫婦の平均的な支出額を見ていきましょう。

老後の備えについても確認します。

1. 公的年金「厚生年金と国民年金」のしくみとは

そもそも日本の年金制度には、下図のように国民年金と厚生年金があります。

まずはそれぞれの違いを押さえておきましょう。

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和5年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

1.1 国民年金(1階部分)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満の方
  • 保険料:一律(年度ごとに見直し)
  • 年金額:納付期間により決定

1.2 厚生年金(2階部分)

  • 加入対象:主に会社員、公務員など
  • 保険料:報酬比例制
  • 年金額:加入期間や納付保険料により決定

将来受給できる老齢年金は、「国民年金だけ」の人と「国民年金+厚生年金」の人がいると整理できます。

厚生年金に加入していれば、比較的手厚い年金が受け取れると考えられますね。

2.【今日から増額】2023年度の年金額はいくら?

厚生労働省や日本年金機構は、2023年度の年金額を下記のとおり公表しています。

出所:厚生労働省「令和5年度の年金額改定についてお知らせします」

2.1 国民年金

国民年金から支給される「老齢基礎年金」の満額は、67歳以下の方で月額6万6250円、68歳以上の方で月額6万6050円とされました。

2.2 厚生年金

厚生年金の金額として公表されているのは、夫婦2人分の標準的な年金額としての「月額22万4482円」です。

これは、夫婦2人分の老齢基礎年金に加え、夫の老齢厚生年金(平均標準報酬43万9000円で40年間就業した場合)を含んだ金額です。

年収526万8000円である点や、専業主婦(主夫)世帯である点など、限定的なモデルケースであるといえるでしょう。

参考までに、直近データより「実際に支給された年金額」も確認します。

3.「厚生年金と国民年金」実際に支給された金額はいくら?

厚生労働省が公表する「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、まずは厚生年金の受給額事情を確認しましょう。

3.1 厚生年金の年金月額

平均年金月額:14万3965円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万3380円
  • 〈女性〉平均年金月額:10万4686円

※国民年金の金額を含む

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

3.2 厚生年金の年金月額ごとの受給者数

  • 1万円未満:9万9642人
  • 1万円以上~2万円未満:2万1099人
  • 2万円以上~3万円未満:5万6394人
  • 3万円以上~4万円未満:10万364人
  • 4万円以上~5万円未満:11万1076人
  • 5万円以上~6万円未満:16万3877人
  • 6万円以上~7万円未満:41万6310人
  • 7万円以上~8万円未満:70万7600人
  • 8万円以上~9万円未満:93万7890人
  • 9万円以上~10万円未満:113万5527人
  • 10万円以上~11万円未満:113万5983人
  • 11万円以上~12万円未満:103万7483人
  • 12万円以上~13万円未満:94万5237人
  • 13万円以上~14万円未満:91万8753人
  • 14万円以上~15万円未満:93万9100人
  • 15万円以上~16万円未満:97万1605人
  • 16万円以上~17万円未満:101万5909人
  • 17万円以上~18万円未満:104万2396人
  • 18万円以上~19万円未満:100万5506人
  • 19万円以上~20万円未満:91万7100人
  • 20万円以上~21万円未満:77万5394人
  • 21万円以上~22万円未満:59万3908人
  • 22万円以上~23万円未満:40万9231人
  • 23万円以上~24万円未満:27万4250人
  • 24万円以上~25万円未満:18万1775人
  • 25万円以上~26万円未満:11万4222人
  • 26万円以上~27万円未満:6万8976人
  • 27万円以上~28万円未満:3万9784人
  • 28万円以上~29万円未満:1万9866人
  • 29万円以上~30万円未満:9372人
  • 30万円以上~:1万4816人

特徴として下記のことがわかります。

  • 月額のボリュームゾーンは9万円~10万円未満
  • 幅広い受給額にばらけている=個人差が大きい
  • 男女差が約6万円ある

2021年度末時点の数字なので、2023年度の引き上げに伴って変わる可能性はあるものの、傾向が大きく変わることはないでしょう。

厚生年金は現役時代の収入や加入期間に左右されるため、このような男女差・個人差が大きいことに注意が必要です。