3. 「厚生年金が28万円以上」の割合
厚生年金受給者1618万445人のうち、老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)を28万円以上受給しているのは、4万4054人だけです。
ここから割合を算出すると0.27%(男性:0.4%、女性:0.01%)となりました。
平均額と同様に、やはり男女では差があるようです。
これは、当時の女性が現役時代の報酬が低く、また加入期間も短い傾向にあったことが要因であると考えられます。
もし将来の年金額を増やしたい場合、報酬アップや加入期間の延長がカギになるでしょう。
4. 年金だけで暮らせる人は少数派
70代が考える「老後の最低生活費」は28万円ということですが、年金収入だけでこれらをまかなうのは難しそうです。
そもそも、厚生年金や国民年金だけで暮らしている高齢者は少数派となっています。
厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」によると、「公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%」の世帯はたった24.9%でした。
残りの75.1%は、稼働所得や財産所得、仕送りや個人年金などで補填していることがわかったのです。
2年前の調査では100%生活できる高齢者が48.4%だったので、今後も減少していく可能性は高いです。
老後の生活費は人それぞれで異なりますが、誰もが「年金以外の老後の備え」について考えておく必要があるといえるでしょう。
厚生年金が少ない場合は、iDeCoや個人年金保険などで独自の年金を作るのもひとつです。
もちろん貯蓄を増やすことも老後対策のひとつですが、低金利かつ物価上昇がはげしい現代では、預貯金だけではなかなか進まない可能性も高いです。
ある程度はNISAや投資信託等の資産運用に回し、お金を増やすという視点を持つことも重要になるでしょう。
5. 年金のまとめ
"老後のひと月当たり最低予想生活費"を聞く問いに対し、70歳代の平均回答は28万円となりました。
一方で、老齢年金(厚生年金と基礎年金)として「月額28万円以上」を受給している人はわずか0.27%にとどまります。
「28万円」という数字は個々の状況で異なるものですが、やはり年金だけでは不足する分があると認識し、老後対策を進めることが重要になるでしょう。
銀行預金だけでなく、iDeCoやNISAなどの非課税制度やその他の資産運用、あるいは保険なども上手に活用しながら、徐々に老後の準備を始めていきたいですね。
参考資料
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「老齢年金ガイド 令和5年度版」
- 金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](令和4年)」
- 厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」
太田 彩子