なぜ還暦を迎えたあとも働きたい人が多いのか
8割以上の人が「65歳以降も働き続けたい」と思っており、実際に半数以上の人が65歳以降も働いていることがわかりました。
2021年の法改正により、労働条件が変わったことも就労意欲が高くなった要因の1つと言えますが、他にも「還暦を迎えたあとも働き続ける理由」はあるのでしょうか。
還暦を迎えたあとも働きたい人が多い要因として、2つの理由が考えられます。
- 貯蓄額が十分でない
- 年金の繰り下げ受給
上記について、詳しく解説していきます。
●貯蓄額が十分でない
PGF生命による「還暦人の貯蓄額」に関する調査では、約4割の人が貯蓄額が「300万円未満」であることがわかりました。
一方で貯蓄額が2000万円以上の人は約3割となっており、老後に備えて貯蓄をしている人のほうが少ないとわかります。
生命保険文化センターの行った調査によると、夫婦で老後生活を送ることを想定したうえで必要と考える最低日常生活費は、月額で平均23万2000円となりました。
上記を参考に老後の生活費をシミュレーションする場合、貯蓄をあまりしていない人にとっては、年金だけで生活していくのは少々難しいように思えます。
また、近年においては物価の上昇や不安定な社会情勢が見受けられることから、生活への不安感を感じて「働けるうちは働いておこう」と考える人が多いのだとうかがえます。
●年金の繰下げ受給
もう1つの要因として「年金の繰下げ受給」が挙げられます。
現在の日本の年金制度では、65歳で年金を受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰り下げて増額した年金を受け取ることが可能となっています。
繰り下げた期間に応じて年金額が増額され、その増額率が変わることはありません。
上記のことから、働けるうちは働いて年金の繰下げ受給をして、増額された年金を受給する人も一定数いると考えられます。
変わる老後のライフスタイル
本記事では、調査データをもとに「働く還暦人」について解説していきました。
8割以上の人が「65歳以降も働き続けたい」と思っており、実際に半数以上の人が65歳以降も働いていることがわかりました。
還暦人の就労意欲が増加している要因として、下記3つが挙げられます。
- 法改正により還暦人でも就労機会が増えたため
- 貯蓄額が十分でないため
- 年金の繰下げ受給制度があるため
上記の理由から、老後生活における生活資金を考え「働けるうちは働いておこう」という考えの人が一定数いるのかもしれません。
少子高齢化は依然として進行しており、過去の高齢者の労働者推移をみると、今後の日本においても就労者の高齢者割合は増加していく可能性が高いと考えられます。
参考資料
- 総務省統計局「出生年別卯(う)年生まれの人口」
- プルデンシャル ジブラルタ ファイナンシャル生命保険株式会社「2023年の還暦人(かんれきびと)に関する調査」
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~」
- 厚生労働省年金局「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金の繰下げ受給」
- 公益財団法人 生命保険文化センター「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」
- 総務省「統計からみた我が国の高齢者」
太田 彩子