岸田首相は、2022年11月28日に行われた「新しい資本主義実現会議」で、NISAの新しい拡充案(新NISA)を発表しました。
現行のNISAと比べて、どんなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。
今回は、2024年に導入される「新NISA」の改正ポイントや注意点について解説します。
運用期間ごとの成果もシミュレーションしているので、あわせて参考にしてください。
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新NISAで押さえておくポイント
新NISAは、2024年に導入が予定されています。
現行制度と比べて押さえておくべき最低限のポイントは、次の3つです。
- 運用益の非課税期間が無期限化
- 投資枠の併用が可能
- 年間投資枠の拡大
それぞれの内容について確認しましょう。
1. 運用益の非課税期間が無期限化
新NISAでは、投資によって生じた利益が非課税となる期間が無期限になります。
通常、株式や投資信託で得た利益(=運用益)は課税対象となりますが、NISAは運用益に対して課税されません。
現行NISAの非課税期間は、「一般NISA」だと5年、「つみたてNISA」は20年です。
新NISAでは、非課税の期間が無期限に拡充されます。
2. 投資枠の併用が可能
投資枠を併用できる点も、改正された項目では重要なポイントです。
現行NISAでは「一般NISA」か「つみたてNISA」のどちらかしか選べません。
つまり「つみたてNISA」を活用して、毎月の定額投資を実施しながら、余剰資金が発生した場合に「一般NISA」を利用するといった利用ができませんでした。
しかし、新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用して利用できる制度となります。
それぞれ目的や用途にあわせて利用しやすくなったといえるでしょう。
3. 年間投資枠の拡大
年間で投資できる枠が拡大した点もポイントです。
現行NISAと新NISAの年間投資枠を比較すると、下表の通りになります。
投資枠の拡大の背景には、2022年11月28日に内閣が公表した「資産所得倍増プラン」が関係しています。
金融庁は、2023年2月24日に「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況に関する調査結果」を公表しました。
その結果、2022年12月末時点における「NISA(一般・つみたて)口座数」は1804万4165口座で、買付額は約30兆7467億円となっています。
「資産所得倍増プラン」では、今後5年間でNISA総口座数と買付額を倍増させると発表しました。
投資枠が拡大したので、資産運用に回す資金がある人は、より新NISAを積極的に活用するでしょう。
一方で、新NISAで注意しておきたいポイントもあります。次章にてくわしく解説します。
新NISAで気を付けたいポイント
新NISAで気をつけるポイントは「現行NISAで投資している分を移管(=ロールオーバー)できない」点です。
そのため、非課税期間を迎えると課税口座に資産を移す必要があります。
非課税期間は、一般NISAで5年、つみたてNISAで20年です。
新NISAが始まる2024年以降も、現行NISAの制度は別枠として継続するので、非課税期間が継続している間は問題ありません。
非課税期間が終わると、資産を売却するか課税口座に移すしかできないので、注意しましょう。
現行NISAは2024年までにやっておくべき?
新NISAが始まる前に、現行NISAをやるべきか迷われている人もいるでしょう。
前章でお伝えした通り、現行NISAは2024年以降ロールオーバーができません。
もし、2023年に一般NISAで投資した場合、5年後の2028年には課税口座に移管するか売却する必要があります。
投資対象に選んだ金融商品によっては、5年間で市場が下落して元本を割るリスクもあります。
リスクやリターンのバランスを考えて投資商品を選ぶ自信がない場合は、新NISAがスタートするまで待っておくのも良いでしょう。
NISAで資産運用した場合の成果をシミュレーション
毎月3万円を資産運用に回して、想定利回りを3%にした場合、運用益はいくらになるのでしょうか。
金融庁が公開している「資産運用シミュレーション」で確認してみます。
●積立期間を10年にした場合
積立期間が10年の場合、最終積立金額は419万2243円です。元本360万円に対して、運用収益は59万2000円になりました。
●積立期間を20年にした場合
積立期間が20年の場合、最終積立金額は984万9060円です。元本720万円に対して運用収益は264万9000円になりました。
●積立期間を30年にした場合
積立期間が30年の場合、最終積立金額は1748万2107円です。元本1080万円に対して運用収益は668万2000円になりました。
投資期間が長くなるほど、資産運用の効果が高まる様子がわかります。
「新NISAの活用も」資産運用は老後に向けた対策で重要な役割
運用で得た利益を非課税で保有できるNISAは、中長期的な資産形成に有効な手段だといえます。
老後の生活資金をはじめ、住宅ローンの繰り上げ返済資金や教育費を捻出したい人は、新NISAのポイントや注意点を押さえながら検討すると良いでしょう。
毎月いくら資産運用に回せば、将来的な資産がいくらになるのか、ぜひシミュレーションしながら自身の生活を設計してみてください。
参考資料
- 内閣官房「第13回新しい資本主義実現会議議事要旨」
- 金融庁「新しいNISA」
- 内閣官房「資産所得倍増プラン」
- 金融庁「NISA・ジュニアNISA口座の利用状況に関する調査結果」
- 金融庁「資産運用シミュレーション」
川辺 拓也