近年、「おひとりさま」という言葉も定着してきた感がありますが、60歳代、70歳代以降の老後をおひとりさまで過ごす方の割合が増えています。
内閣府「令和4年版高齢社会白書」 の調べによると、65歳以上の高齢者人口のうち男性の15.0%、女性の22.1%が一人暮らしとなっています。
今後、老後をおひとりさまで過ごす方は増加すると予想されていますが、経済的な不安を抱える方も増えると考えられます。
特に女性は男性よりも年金受給額が少ない傾向があるので、年金だけで生活できるか不安になるでしょう。
この記事では、70歳代おひとりさま女性の年金は月額いくら受給できるのか、生活費はいくらかかるのかなどについて解説していきますので、老後資金の準備のためにご活用ください。
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1. 70歳代「おひとりさま女性」の年金月額。厚生年金・国民年金はいくら?
老後に受給する年金は、現役時代に加入していた年金制度によって異なります。
会社員や公務員などだった方は厚生年金を受給(国民年金を含む)し、自営業やフリーランスなどだった方は国民年金を受給します。
厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、65歳以上の女性の生年金の平均受給額は10万9261円 です。
もちろんこの金額はあくまでも平均額であり、現役時代の年収や厚生年金への加入期間などによって一人ひとり金額が異なります。
ちなみに、国民年金の女性の平均受給額は5万4346円で、厚生年金の方が国民年金の2倍近い金額となっています。
70歳代おひとりさま女性の年金月額は約5万5000円〜約11万円となっていますが、年金だけで生活費をカバーすることはできるのでしょうか。次章で、70歳代おひとりさま女性の生活費の目安と比較しながら確認していきましょう。
2. 70歳代女性の生活費は毎月約8000円の赤字
70歳代をおひとりさまで暮らすと、食費や光熱費、住居費などすべてを自分のお金で支払わなければなりません。これから老後を迎える方にとっては、70歳代おひとりさま女性の生活費はどのくらい必要なのか知っておきたいものです。
総務省の「2019年全国家計構造調査 家計収支に関する結果」によると、65歳以上の女性一人世帯の実収入(年金、その他合計額)は14万1646円で、税金などを差し引いた可処分所得は13万3107円です。
毎月の生活費が13万円程度に収まれば赤字を出さずに済みますが、実際の支出は14万607円で可処分所得を上回っており、7500円の赤字となっています。
では、毎月の生活費の内訳はどうなっているのか、下表にまとめましたのでご覧ください。
最も大きい割合を占めるのが食料費で24.7%、外食費も合わせると28.5%です。ほかにも、住居費や教養娯楽、光熱・水道費、交通・通信費なども多くなっています。
3. 70歳代女性の貯蓄額は平均1216万8000円
前章で、70歳代おひとりさま女性の老後の生活費は、毎月約8000円の赤字が出ることがわかりました。年間では9万6000円になり、85歳まで生存した場合、65歳からの20年間では192万円の赤字になる計算です。
この不足分は主に貯蓄を切り崩して補うことになると考えられますが、70歳代おひとりさま女性はどのくらいの貯蓄があるのでしょうか。
総務省の「2019年全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果の公表」によると、70歳代女性の平均貯蓄額は1216万8000円です。これだけの貯蓄があれば、老後の生活費の赤字を補うことは可能でしょう。
しかし、平均額は極端に高い金額があるとその影響を受けやすい傾向があるため、実態としての平均額は1216万8000円より低額であると考えられます。
老後はケガや病気で入院や通院、手術を受ける可能性が高くなり、介護施設への入所などの費用も高額になるケースが多くなる傾向にあります。毎月の生活費だけでなく、こういったまとまった出費への備えも必要でしょう。
4. まとめにかえて
70歳代おひとりさま女性の年金受給額は、厚生年金の場合は約11万円、国民年金の場合は約5万5000円です。
毎月の生活費は約14万円かかるため、年金収入のみの場合は毎月赤字になる可能性があります。
不足分を補うために70歳代も働くという選択肢もありますが、健康状態によっては難しいこともあるでしょう。老後資金のために早くから確実に貯蓄をすることで、老後の生活費の不足を補うことができるでしょう。
参考資料
- 内閣府「令和4年版高齢社会白書」
- 厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省「2019年全国家計構造調査 所得に関する結果及び家計資産・負債に関する結果の公表」 家計資産・負債に関する結果
木内 菜穂子