「サラリーマンで、子供よりも早い時間に出社する方も多いと思います。ところが、私はずっと家にいるわけです。あるときから『いってらっしゃい』と言って子供を送り出し、子供が学校から帰ってくれば『お帰りなさい』と迎えるようになったのですから、そのうち子供も不思議がりますよね」

父親がなぜいつも家にいるのかについて、どう説明しようかとA氏は少し悩んだといいます。ただ、ちょうどリストラを言い渡された時期は夏。そこで「長めの夏休みだよ」と言い切って乗り切ったのだそうです。

その3:起業を決意したものの「えっ!?」と思った瞬間

実はA氏、退職前から起業を考え始めていました。そこで、転職活動で次の仕事を見つけるのではなく、起業して自ら新しいビジネスをスタートさせることにしたのです。そのような経緯もあり、A氏は退職後ハローワークに出向いた際「会社を立ち上げると毎月手にしている失業保険はどうなるのか」と相談しました。すると、会社を立ち上げて、役員に就任することで失業保険をもらえなくなる、という説明を受けたのだといいます。

「新たに仕事を始めるので失業保険をもらえなくなるのは当然とはいえ、起業しても売り上げがすぐに立つわけではないので、一瞬『えっ、そうなんだ』と思いましたね。ただ、転職して他人に人生をコントロールされるよりは、挑戦する人生の方が面白いかなと考えて、思い切って会社を立ち上げました」。

失業保険の期間を満了せずにA氏は起業に踏み切りました。A氏はそれまで高年収の金融機関に勤めていたこともあって、それなりの蓄えがあったようです。見方を変えれば、だからこそA氏はこのような選択ができたのだともとれます。実際にA氏もこう続けます。

「最低限食べていけるだけの蓄えがあったので新しいことにチャレンジしてみようかなと思いましたが、何にもないとなるとやはりとりあえず就職という気持ちにはなったかもしれませんね」。

まとめにかえて

A氏は今回、明るい様子で当時の話をしてくれましたが、予期せぬリストラの衝撃の大きさ、その苦難は計り知れないものがあります。困りごとの捉え方、乗り越え方もきっと人それぞれに違うでしょう。みなさんなら、どう捉え、どう乗り越えようとされるでしょうか?

LIMO編集部