数年前のとある夏の日、金融機関に勤務していたA氏(当時30代・男性)は出社早々、上司に会議室に来るよう言い渡されました。そこで、上司と人事部立会いのもと、プロジェクトの終了などの理由とともに一時金等支払いの提示を受けたのです。それはA氏がもはや会社にはいられないということを意味していました。いわゆる「リストラ」です。

A氏は会社側と条件を交渉し、お互いに着地点を見出し、しばらくして正式に退職。その後1年もたたず自ら会社を立ち上げることになったのですが、無職の期間にはいくつか困ったこともあったといいます。

その1:何をするにも身分を言えない

大学卒業後、10年以上サラリーマンだったA氏。リストラを言い渡された日が実質的な最終出社日となったため、正式な退職日までの約3カ月間、次に何をしようかと考える毎日が続いたといいます。

「それまでは社内で評価されていたと思っていた」とA氏は当時を振り返ります。実際、最年少で就いたポストは出世の最短コースであり、次に計画していたプロジェクトを成功させようと目の前の仕事を頑張っていたといいます。リストラはまさにそんな最中の出来事だったのです。

それだけに、急に「別のことをやれ」と言われてもすぐに思いつくわけでもありません。当時は今ほど副業に関して社会的な認知は得られておらず、A氏自身も特に副業をすることなどは考えていませんでした。

そこでA氏が困ったのは「自分自身をどう紹介するか」です。

「子供の友達の親の集まりなどで、初対面の人に自分が何をしているのかを説明するのが面倒でしたね。名刺もないですし…。外に出るのが億劫になる人もいるでしょうね」(A氏)。

その2:いつも家にいる父親を子供に不思議がられる

「自分の置かれた状況の説明がしにくいのは外のシーンだけではなかった」と、A氏は続けます。