新NISAやiDeCoが一般的になりつつある今、資産形成に投資信託を取り入れる人が増えています。

投資信託での投資を始める際に、「いきなり一括投資で大きなリターンを狙うべきか、それともコツコツ積立投資が安心なのか…」と迷う方も多いでしょう。

本記事では、人気のオルカンやS&P500を例に、両者のシミュレーション結果を比較しつつ、失敗を防ぐポイントを解説します。

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1. 投資信託の一括投資をシミュレーション【オルカン・S&P500】

一括投資は、まとまった資金を一度に投じる手法です。うまく相場の上昇に乗れれば短期間で大きなリターンが狙えますが、逆に投資直後からマーケットが下落すると含み損を抱えるリスクも高まります。

ここでは、知名度の高いインデックスファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を例に、一括投資でどのようなリターンを得られるか試算してみましょう。短期と長期の差も参考に、自分に合った投資スタイルを検討する際のヒントにしてみてください。

1.1 全世界株式(オール・カントリー)一括投資の試算

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に100万円や300万円を一度に投資した場合の1年後・10年後の想定リターン例です。過去実績から算出された想定利回り(年率16.57%/計算基準日:2025年5月13日)をベースにした単純計算となります。

投資元本100万円の場合

- 1年後:約116万5700円
- 10年後:約463万3060円

投資元本300万円の場合

- 1年後:約349万7100円
- 10年後:約1389万9181円

※本シミュレーションは税金・手数料や相場変動リスクを考慮していません
※想定リターンは、ファンドの過去実績をもとに計算したものであり、将来のリターンを約束するものではありません

1.2 米国株式(S&P500)一括投資の試算

米国代表株価指数S&P500をベンチマークとする「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に、同じように一括投資をした場合の想定リターンです。過去実績から算出された想定利回り(年率18.66%/計算基準日:2025年5月13日)を仮定しています。

投資元本100万円

- 1年後:約118万6600円
- 10年後:約553万4055円

投資元本300万円

- 1年後:約355万9800円
- 10年後:約1660万2164円

※本シミュレーションは税金・手数料や相場変動リスクを考慮していません
※想定リターンは、ファンドの過去実績をもとに計算したものであり、将来のリターンを約束するものではありません

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2. 積立投資のシミュレーション例

一括投資よりもリスクを抑える手法として多くの人が実践しているのが積立投資です。投資額を時間的に分散するため、高値掴みしにくいメリットがあり、初心者も取り組みやすいのが特徴です。同じ全世界株式やS&P500を月々積み立てた場合、将来的にどの程度のリターンが期待できるのか見ていきましょう。

2.1 長期投資のメリット

積立投資は「ドルコスト平均法」によって、基準価額が高い時も安い時も一定額で買い付けるため、購入単価が平準化されます。一括投資と比べると短期的な爆発的リターンは狙いにくい反面、下落局面でもコツコツ買い増してその後の上昇に備えることができます。

投資初心者には、積立投資でリスクを抑えて運用をスタートし、慣れてきたら余裕資金で一括投資を検討する方法もおすすめです。

2.2 オルカン・S&P500を積立した場合

以下は月々3万円・5万円を20年間積み立てた例です。年率の想定リターンに基づく机上計算であり、実際のリターンを保証するものではありません。

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)

- 想定年率:16.57%
- 月3万円×10年:投資元本360万円 → 約847万6058円
- 月5万円×10年:投資元本600万円 → 約1412万6763円

eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)

- 想定年率:18.66%
- 月3万円×10年:投資元本36万円 → 約947万2392円
- 月5万円×10年:投資元本600万円 → 約1578万7320円

※いずれも手数料や税金、相場下落リスクは考慮していません。

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3. 一括投資前に押さえたいリスクと注意点

一括投資は短期間での運用成果が見込みやすい一方、投資直後に相場が下落すると大きく評価額が減り、含み損を抱えるリスクが高い方法です。特に運用期間が短期の場合は回復する前に投資資金が必要になってしまう恐れもあります。ここでは、一括投資を行う際に確認すべきポイントをまとめました。

3.1 相場下落リスク

「買い付け後に相場が急落する」リスクは、一括投資特有の不安要素です。投資額が大きいほど、心理的負担が大きくなる傾向があります。もし投資直後に下落してしまい、そのストレスに耐えられずに売却してしまうと大きな損失を確定させる可能性もあり、投資計画の継続が困難になることがあります。

3.2 長期・積立・分散の基本

マーケットを正確に読むのは難しいため、資産運用では「長期でコツコツ投資を継続し、投資先を分散する」ことでリスクを低減しながら収益を狙う考え方が有効です。一括投資の場合でも「分散」に着目し、投資対象を株式だけではなく債券や保険など複数の資産クラスに分配することで、価格変動のブレを抑制できます。

3.3 投資信託以外の選択肢

投資信託以外にも、国債や社債といった債券、貯蓄型生命保険など、値動きが比較的安定している商品もあります。運用目的が「大きく増やす」よりも「できるだけリスクを減らす」ことにある場合は、こうした低リスク資産を組み合わせて運用するのも検討すべき選択肢です。

4. まとまった資金を活用するポイント

資産運用の正解は一つではありません。まとまった金額を一括で投じるか、少額を積み立てるかの2択ではなく、両方を組み合わせる方法もあります。重要なのは「近い将来に使う予定がない資金を投資に回す」ことと、「自分のリスク許容度を把握する」ことです。

4.1 「一括投資」と「積立投資」は併用も可能

市場が下落したタイミングで余裕資金をまとめて投資しつつ、毎月少額を積み立てる方法は、リスク分散と時間分散の両方のメリットを得られます。相場の上昇局面では一括投資の効果を享受し、下落局面では積立投資を有利に進めることができるでしょう。

4.2 低リスク資産への一括投資

もし値動きの大きさに不安を感じる場合は、国債や社債、貯蓄型保険など低リスク資産へ一括投資する選択肢があります。株式ほどのリターンは期待できないかもしれませんが、満期時に元本が戻ってくる商品や返戻金が得られる保険商品は、資金の安定性を重視する人に向いています。

4.3 毎月貯金できるお金で積立投資

日常生活に支障のない範囲で毎月積み立てるなら、無理なく続けやすいのが積立投資の強みです。上昇相場でも下落相場でも機械的に買い付けることで、投資タイミングの判断に苦慮することを避けられます。長期的に見れば、取得単価がならされるメリットが大きく働くでしょう。

NISA・iDeCoの活用もおすすめ

運用益や配当にかかる税金を優遇する制度としてNISAやiDeCoがあります。NISA口座を使えば株式や投資信託の売却益・配当が一定額まで非課税になり、iDeCoでは掛金が所得控除になり運用益も非課税です。ただしiDeCoは原則60歳まで引き出せないなど制約もあるため、制度の特徴をよく理解して選びましょう。

5. まとめ

一括投資は相場をうまく捉えれば大きなリターンを期待できますが、大きく下落した場合のダメージも大きい方法です。一方の積立投資は短期の爆発力に欠けるものの、リスクを抑えながらコツコツ資産形成しやすく、初心者にも取り組みやすい点が魅力です。

結局どちらが良いかは、投資目的や資金の使い道、リスク許容度で決まります。迷った時はお金のプロに相談することも検討し、自分に合った投資スタイルを選ぶことができれば、長期的に見て納得のいく成果を目指せるはずです。

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マネイロ編集部