9月6日は「鹿児島黒牛・黒豚の日」

9月6日は、9(ク)と6(ロ)の語呂合わせから、様々な「クロ」に関する記念日が制定されていますが、やはり、色の「黒」に関連する記念日が多いようです。今回は、その中でも「鹿児島黒牛・黒豚の日」に注目したいと思います。

これは、鹿児島黒牛黒豚銘柄販売促進協議会が1998年に制定したもので、鹿児島県の特産物である黒牛と黒豚の普及を促進しようという意図がうかがえます。

鹿児島黒豚は豚肉では全国屈指のブランド

鹿児島黒牛(以下、「黒牛」とします)も人気ブランドの1つですが、牛肉に関しては国内でも強力な競合相手が多く、松坂牛、宮崎牛、米沢牛、神戸ビーフなどのブランド力に比べると劣勢にあることは否めません。“おいしい牛肉”と聞いて、すぐに黒牛を思い浮かべる人は多くないと推測されます。

その一方、鹿児島黒豚(以下、「黒豚」とします)は、豚肉としては全国屈指の人気ブランドと見ていいでしょう。“おいしい豚肉”と聞くと、真っ先に黒豚をイメージする人も多いのではないでしょうか。

黒豚がおいしい4つの秘密とは

黒豚はそんなにおいしいのでしょうか? 鹿児島県黒豚生産者協議会のホームページを見ると、黒豚のおいしさの秘密として以下の点が挙げられています。

  1. 肉の筋繊維が細いため食べた時に歯切れがよくやわらかい
  2. 脂肪組織の水分含有量が少ないため水っぽさがない
  3. 他の品種より中性糖やアミノ酸含有量などの旨味成分の含有量が多い
  4. 脂肪の解ける温度が高いために脂がベトつかずさっぱりしている

平たく言うと、他の品種よりも肉質がやわらかくて味がジューシーということでしょうか。

カンショを配合した飼料が独特の旨味を醸成する

そして、こうした黒豚のおいしさを生み出している最大の要因は、飼料にカンショを配合していることです。ここでいうカンショは薩摩芋(サツマイモ)を指しています。鹿児島でたくさん獲れる栄養分たっぷりの薩摩芋が、あの美味を作り出しているというのは、理屈抜きに納得できる気がします。

また、鹿児島県黒豚生産者協議会が厳格な生産・流通体制を敷いており、「かごしま黒豚証明書」を交付することでブランドを守っています。そして、鹿児島県農業開発総合センター畜産試験場では常に品種改良が行われており、黒豚の味は進化を続けていることも重要と言えましょう。

黒豚を味わうならとんかつが一番?

さて、こうして作り出される黒豚は、どのように食べるのが一番でしょうか。しゃぶしゃぶ、とんかつ、角煮、生姜焼き、とん汁など数多くの料理があります。もちろん、これは人それぞれの好みがありますし、また、季節によっても異なるでしょうから、一概に決められるものではありません。

しかし、黒豚の特徴であるやわらかい肉質とジューシーな味を堪能するならば、しゃぶしゃぶも捨て難いですが、やはり、とんかつに軍配が上がるのではないでしょうか。とんかつの場合、豚肉の良し悪しが一番出やすいと考えられます。なぜならば、おいしくない豚肉は、揚げた油と衣に肉が負けてしまう一方で、おいしい豚肉はそれらと上手くマッチすると思われるからです。

鹿児島で食べた黒豚ロースかつ定食

黒豚はおいしいだけあって値段も高い

ちなみに、筆者は以前に一度、鹿児島市内の店で黒豚ロースかつと普通のロースかつを食べ比べたことがあります。この違いを文章で表現するのは非常に難しいのですが、明らかな違いを感じました。普通のロースかつもおいしいのですが、黒豚ロースかつは肉質のやわらかさ、旨味とジューシーさが圧倒的に上回っていました。

ちなみに、味噌汁とキャベツ(お代わり自由)が付いた定食では、見た目の量がほとんど同じにもかかわらず、黒豚ロースかつ定食の方が450円(税込み)も高い値段となっていたのが印象的です。でも、それだけの違いを感じることができたと思っています。

外食産業のとんかつは成長著しい注目カテゴリー

さらに、筆者が黒豚を味わうのに最適だと思っているとんかつは(注:かつ丼を含む)、外食産業の中で成長著しいカテゴリーの1つです。

アークランドサービスホールディングス(3085)が展開する最大手の「かつや」を始め、「和幸」「濱かつ」などが出店を増やしており、ここ最近では牛丼チェーン「松屋」を展開する松屋フーズ(9887)が「松のや」「松乃家」というブランドでとんかつ市場に参入してきました。

実際、富士経済研究所が発表したリリースによると、外食産業としての「とんかつ」の市場規模は、2015年の381億円(前年比+21%増)から2016年は444億円(同+17%増)と拡大しています。まだ規模が小さいとはいえ、成熟化が言われる外食産業の中では際立つカテゴリーと言えましょう。

松乃家のロースかつ&ヒレかつ定食

とんかつ市場の拡大は黒豚にも追い風

もっとも、現在伸びているとんかつ市場では、低価格の輸入ポークが主流になっていると見られ、値段の高い黒豚が登場することは滅多にありません。

しかし、“脂っこい”という印象が少なからずあるとんかつのおいしい味が見直されるならば、黒豚にとっても決して悪いことではないと思われます。こうしたとんかつに対する消費者のニーズの高まりを受けて、黒豚がどのように進化していくか楽しみです。

最後に、私たちにおいしい味を提供してくれる黒豚を始めとする全ての豚さんに感謝。

LIMO編集部