近年、物価上昇のニュースが絶えません。実際、2026年5月の消費者物価指数(総合)は前年同月比1.5%上昇するなど、お金を取り巻く環境は大きく変化しています。
こうしたなかで、「老後資金は早いうちから準備したほうがいい」と感じ、20歳代・30歳代の若いうちから資産形成に取り組む人も増えています。
一方で、誰にも頼れない「おひとりさま(単身世帯)」にとって、「同世代は一体どれくらい貯蓄しているのか」「将来に向けてどの程度の資産があれば安心なのか」は非常に気になる問題です。
周囲のイメージや「平均値」という言葉だけに惑わされることなく、最新の公的データをもとに自分の現在地を客観的に把握し、確実な一歩を踏み出しましょう。
まずは、気になる「同世代のおひとりさま」がどれくらい金融資産を保有しているのか、年代別の実態から確認していきます。
1. この記事の3つのポイント
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おひとりさまの貯蓄額は、全年代を通して一部の富裕層が平均額を大きく押し上げている。 -
実態に近い「中央値」を見ると、30代・40代は100万円、50代で120万円にとどまる。 -
すべての年代において約3割が「貯蓄ゼロ」であり、資産状況の二極化が顕著に進んでいる。
2. 同世代の単身者はいくら貯めている?30〜60歳代「おひとりさまの貯蓄額」リアルな実態
では、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとに、30歳代から60歳代までのおひとりさま世帯における金融資産の状況を見ていきましょう。
※補足:本調査における「金融資産」について 本調査でいう「金融資産」とは、将来に備えて保有している預貯金や有価証券などを指します。「金融資産非保有」は、資産形成を目的とした金融資産を保有していない状態であり、生活費の支払いや決済に利用する普通預金などは含まれていません。そのため、「貯金がまったくゼロ」という意味ではありません。
2.1 30歳代のおひとりさま世帯はどのくらい貯蓄している?
【一覧表】30歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成
- 金融資産非保有:32.3%
- 100万円未満:14.2%
- 100~200万円未満:14.2%
- 200~300万円未満:4.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.8%
- 500~700万円未満:5.5%
- 700~1000万円未満:3.1%
- 1000~1500万円未満:5.5%
- 1500~2000万円未満:4.3%
- 2000~3000万円未満:2.5%
- 3000万円以上:3.4%
- 無回答:3.1%
◆平均と中央値
- 平均:501万円
- 中央値:100万円
30歳代のおひとりさま世帯では、金融資産の平均額は501万円ですが、中央値は100万円にとどまっています。
金融資産を保有していない人が32.3%、100万円未満が14.2%となっており、この2つを合わせると約半数が100万円以下です。その一方で、3000万円以上の金融資産を保有する人も3.4%存在しており、同じ30歳代でも資産状況には大きな差があることが分かります。
2.2 40歳代のおひとりさま世帯はどのくらい貯蓄している?
【一覧表】40歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成
- 金融資産非保有:32.1%
- 100万円未満:15.1%
- 100~200万円未満:7.1%
- 200~300万円未満:5.9%
- 300~400万円未満:4.3%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.2%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.2%
- 1500~2000万円未満:1.2%
- 2000~3000万円未満:2.8%
- 3000万円以上:9.9%
- 無回答:2.5%
◆平均と中央値
- 平均:859万円
- 中央値:100万円
40歳代になると平均額は859万円まで増加していますが、中央値は30歳代と変わらず100万円です。
金融資産非保有と100万円未満を合わせると47.2%となる一方で、3000万円以上の金融資産を持つ人は9.9%にのぼります。
平均額だけを見ると資産が増えているように感じますが、中央値との差はさらに広がっており、おひとりさま世帯の資産格差がより大きくなっていることがうかがえます。
2.3 50歳代のおひとりさま世帯はどのくらい貯蓄している?
【一覧表】50歳代・おひとりさまの貯蓄額(平均・中央値)

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成
- 金融資産非保有:35.2%
- 100万円未満:10.1%
- 100~200万円未満:7.4%
- 200~300万円未満:4.6%
- 300~400万円未満:2.7%
- 400~500万円未満:3.3%
- 500~700万円未満:4.9%
- 700~1000万円未満:4.6%
- 1000~1500万円未満:6.0%
- 1500~2000万円未満:3.3%
- 2000~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:10.4%
- 無回答:1.9%
◆平均と中央値
- 平均:999万円
- 中央値:120万円
50歳代では、金融資産の平均額は999万円、中央値は120万円となっています。
40歳代と比べて平均額はさらに増えていますが、中央値の伸びは限定的で、金融資産非保有と100万円未満を合わせると45%を超えています。
一方、3000万円以上の金融資産を保有する人は10.4%となっており、平均額が高く見える背景には、一部の高額資産保有者の存在があることが分かります。
2.4 60歳代のおひとりさま世帯はどのくらい貯蓄している?
60歳代・おひとりさまの貯蓄額
- 平均:1364万円
- 中央値:300万円
- 金融資産非保有:30.4%
- 3000万円以上:15.6%
60歳代では、平均額は1364万円、中央値は300万円となっています。
退職金などの影響もあり、3000万円以上の金融資産を保有する人は15.6%に達し、平均額を押し上げる要因となっています。
その一方で気になるのは、「金融資産非保有(貯蓄ゼロ)」と回答した人が30.4%と約3割にのぼっている点です。
定年を迎える年代になっても老後資金を十分に準備できていない人は決して少なくありません。
頼れる家族がいないおひとりさま世帯だからこそ、現役時代から計画的に資産形成を進めることが重要になります。
貯蓄額のデータを見て、「自分は平均より下だ」と焦ってしまった方もいらっしゃるかもしれません。
でも、極端なお金持ちが引き上げる「平均値」よりも、データを順に並べて真ん中にくる「中央値」のほうが、より私たちの肌感覚に近い実態を表しています。
資産形成を焦る前に、まずは手取り月収の3〜6ヶ月分を「生活防衛資金」として普通預金などで確保することが、いざという時のリスクヘッジになります。
無理のない範囲で、まずはこの生活防衛資金を貯めることから着実に始めてみてはいかがでしょうか。
3. 老後資金の不足額は毎月3万円?家計調査データに潜む「2つの落とし穴」とは
では、実際に65歳以降の一人暮らしでは、毎月どれくらいの生活費が必要になるのでしょうか。
総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の1カ月当たりの家計収支は以下のとおりです。
- 実収入:13万1456円(うち年金などの社会保障給付:12万212円)
- 非消費支出(税金・社会保険料など):1万2990円
- 消費支出(生活費):14万8445円
日々の生活費(消費支出)と、そこから天引きされる税金や社会保険料(非消費支出)を合わせた「毎月の支出」は、合計16万1435円。これに対し、公的年金などを合わせた実収入は13万1456円です。
差し引きすると、毎月「約2万9980円(およそ3万円)」の赤字が生じている計算になります。
主な生活費(消費支出)の内訳を見ると、食料が約4万2000円(エンゲル係数28.7%)、光熱・水道が約1万5000円、交通・通信が約1万3000円、教養娯楽が約1万6000円などとなっており、決して贅沢な暮らしをしているわけではないことが読み取れます。
3.1 家計調査データに潜む「2つの落とし穴」
毎月およそ3万円、年間にして約36万円の赤字を、これまでの預貯金などの取り崩し(デキュムレーション)で補わなければなりません。しかし、この「毎月3万円の赤字」をそのまま自分の老後に当てはめるのは危険です。
この公的データには、見落としてはならない2つの前提条件(落とし穴)が存在します。
3.2 持ち家世帯を前提とした「低い住居費」
この家計調査のデータでは、住居費が「平均約1万2000円」と極めて低く抑えられています。
これは、調査対象に「住宅ローンの支払いが終わった持ち家世帯」が多く含まれているためです。
もしリタイア後も賃貸住宅に住み続ける場合、あるいは高齢者向けの施設に入居する場合は、この1万2000円を大きく超える「家賃負担」が毎月丸ごと上乗せされます。
そのため、賃貸暮らしのおひとりさまの場合、実際の赤字額は毎月7万〜8万円、年間で100万円近くに膨らむ可能性があります。
3.3 医療費や介護費用の増加は「別腹」である点
この平均データには、年齢を重ねるごとに高まる「病気による医療費の自己負担額の増加」や、「介護が必要になった際の初期費用・月額費用」は基本的に織り込まれていません。
民間企業の調査では、生涯で介護に必要な費用(自己負担額)はおよそ2300万円に達するという試算もあるほどです。
これらは日常の生活費とは「別枠」で備えておかなければ、急な出費に対応できなくなります。
このように、おひとりさまの老後にはまとまった資金が必要不可欠です。
こうした厳しい現実を見据え、最近では20歳代・30歳代といった若いうちから「自分のお金は自分で育てる」べく行動を起こす人が急増しています。次章で、その実態に迫ります。


