7月31日に厚生労働省が公表した「令和7(2025)年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が81.05年、女性が87.09年を記録し、高齢期が長期化している実態が改めて示されました。

リタイア後のセカンドライフを中長期的に支える生涯の収入源として公的年金の重要性が増す中、実際の受給水準がどの程度であるかを具体的なデータから把握しておくことは、現実的な生活設計の第一歩となります。

厚生年金の平均受給額は月額15万289円ですが、実際の金額は受給者によって大きく異なります。

男女別では男性が16万9967円、女性が11万1413円で、受給額は月額1万円未満から30万円以上まで幅広く分布しています。

川勝 隆登
元SMBC日興証券の資産運用コンサルタントとして数多くのお客様の資産運用に携わってきた経験からも、「年金額は住む場所で決まるものではない」という点は、意外と誤解されやすいポイントだと感じます。都道府県別の平均額を見るときは、地域差そのものよりも、その背景にある仕組みを理解することが大切です。

また、都道府県別の平均額を見ると、最も高い神奈川県と最も低い青森県では月額4万円を超える差がありますが、年金額が居住地によって決まるわけではありません。

本記事では、厚生年金と国民年金の全国平均や都道府県別の受給額を確認するとともに、地域差が生じる背景や厚生年金の受給額を決める仕組みについて解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  厚生年金の全国平均は月額15万289円、男女差は約5万8000円
  •  都道府県別では最高の神奈川県と最低の青森県で月額4万円超の差がある
  •  地域差の背景と、定年間近の会社員が元証券コンサルタントに相談したNISA活用のリアルな体験談を紹介

2. 厚生年金の全国平均は「月額15万289円」

会社員や公務員のほか、特定適用事業所(※1)で一定の要件を満たして働くパートなどは、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受給できます。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金の受給権者(※2)が受け取る平均年金月額は15万289円でした。

ただし、厚生年金の受給額には男女差や個人差があり、実際に受け取れる金額は一人ひとり異なります。

※1 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※2 厚生年金の被保険者は第1号~第4号に区分されており、ここでは民間企業などに勤めていた人が受け取る「厚生年金保険(第1号)」(以下記事内では「厚生年金」と表記)の年金月額を紹介

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

2.1 厚生年金の受給額別人数をチェック

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

このように、厚生年金の受給額は月額1万円未満から30万円以上まで幅広く分布しています。

また、厚生年金の平均年金月額には、都道府県による違いもあります。

3. 厚生年金の平均年金月額が「高い都道府県・低い都道府県」

厚生年金の平均受給額は、都道府県によって差があります。

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに、平均年金月額が高い都道府県と低い都道府県を確認します。

3.1 厚生年金の平均年金月額が「高い都道府県」

  • 神奈川県:17万457円
  • 千葉県:16万5103円
  • 東京都:16万3892円
  • 奈良県:16万2292円
  • 埼玉県:16万1752円

3.2 厚生年金の平均年金月額が「低い都道府県」

  • 青森県:12万8129円
  • 沖縄県:12万8819円
  • 宮崎県:12万9224円
  • 秋田県:12万9503円
  • 山形県:13万1169円

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額2/3

都道府県別老齢年金受給者数及び平均年金月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

【47都道府県別】

  • 北海道:14万1069円
  • 青森県:12万8129円
  • 岩手県:13万2943円
  • 宮城県:14万4920円
  • 秋田県:12万9503円
  • 山形県:13万1169円
  • 福島県:13万6880円
  • 茨城県:15万2963円
  • 栃木県:14万9631円
  • 群馬県:14万8666円
  • 埼玉県:16万1752円
  • 千葉県:16万5103円
  • 東京都:16万3892円
  • 神奈川県:17万457円
  • 新潟県:13万8683円
  • 富山県:14万4644円
  • 石川県:14万1792円
  • 福井県:14万787円
  • 山梨県:14万4665円
  • 長野県:14万4668円
  • 岐阜県:14万9910円
  • 静岡県:15万1960円
  • 愛知県:16万766円
  • 三重県:15万1949円
  • 滋賀県:15万4456円
  • 京都府:15万1483円
  • 大阪府:15万6272円
  • 兵庫県:15万9086円
  • 奈良県:16万2292円
  • 和歌山県:14万5933円
  • 鳥取県:13万3459円
  • 島根県:13万3918円
  • 岡山県:14万6429円
  • 広島県:15万745円
  • 山口県:14万8166円
  • 徳島県:13万4131円
  • 香川県:14万4026円
  • 愛媛県:14万301円
  • 高知県:13万2202円
  • 福岡県:14万5822円
  • 佐賀県:13万4191円
  • 長崎県:13万6825円
  • 熊本県:13万2740円
  • 大分県:13万6507円
  • 宮崎県:12万9224円
  • 鹿児島県:13万3343円
  • 沖縄県:12万8819円
  • その他:13万3788円

厚生年金の平均月額が最も高い神奈川県と、最も低い青森県との差は、月額で4万円を超えます。

年間に換算すると50万円以上の差となるため、地域別の平均額には小さくない開きがあることが分かります。

4. 「都道府県で年金額が違う」と聞くと、引っ越した方が得?

厚生年金の平均年金月額は都道府県によって差がありますが、「住んでいる都道府県によって年金額が決まる」というわけではありません。

厚生年金の受給額は、現役時代の給与や賞与、厚生年金に加入していた期間などをもとに計算されるため、同じ都道府県に住んでいても、働き方や収入が異なれば受け取る年金額も変わります。

都道府県別の平均額は、その地域に住む受給権者全体の傾向を示したものです。

都市部では比較的賃金水準が高い企業が多いことなどから平均額も高くなる一方、地域によって産業構造や就業状況が異なるため、平均年金月額にも差が生じています。

つまり、都道府県ごとの順位は「住む場所によって年金額が変わること」を示すものではなく、「その地域に住む受給権者の平均額」の違いと考えると理解しやすいでしょう。

では、実際に厚生年金の受給額はどのような仕組みで決まるのでしょうか。

次章では、報酬比例部分の計算方法とあわせて、その仕組みを確認します。

5. 厚生年金の受給額はどのように決まる?

厚生年金の受給額には、現役時代の給与や賞与と、厚生年金に加入していた期間が反映されます。

そのため、受給額には個人差が生じやすい仕組みです。

厚生年金の報酬比例部分は、次の計算式によって求められます。

報酬比例部分の計算方法3/3

報酬比例部分の計算方法

出所:日本年金機構 年金用語集「は行 報酬比例部分」

  • A(2003年3月以前):平均標準報酬月額×7.125/1000×2003年3月までの加入期間の月数
  • B(2003年4月以降):平均標準報酬額×5.481/1000×2003年4月以降の加入期間の月数

厚生年金の受給額は、基本的に現役時代の報酬が高く、加入期間が長いほど増える仕組みです。

都道府県ごとの平均年金月額に差があるのは、地域ごとに賃金水準や働き方などが異なるためと考えられます。

都市部では賃金水準が高い傾向があるほか、地域によって会社員や自営業者、共働き世帯などの割合も異なります。

こうした現役時代の収入や就業状況の違いが、厚生年金の平均月額にも反映されているといえるでしょう。

6. 国民年金の平均月額を都道府県別に確認

国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、主に保険料を納付した月数によって決まります。

保険料が原則として一律であるため、厚生年金と比べると、受給額の個人差や男女差、地域差は小さい傾向があります。

ここでは、国民年金の平均年金月額を都道府県別に確認します。

6.1 都道府県別の「国民年金」の平均月額

  • 北海道:5万8435円
  • 青森県:5万7137円
  • 岩手県:6万720円
  • 宮城県:5万9532円
  • 秋田県:5万9147円
  • 山形県:6万827円
  • 福島県:5万9922円
  • 茨城県:5万9395円
  • 栃木県:5万9544円
  • 群馬県:6万564円
  • 埼玉県:5万9007円
  • 千葉県:5万9354円
  • 東京都:5万8313円
  • 神奈川県:5万9342円
  • 新潟県:6万1957円
  • 富山県:6万2989円
  • 石川県:6万1923円
  • 福井県:6万2290円
  • 山梨県:5万9275円
  • 長野県:6万2030円
  • 岐阜県:6万1248円
  • 静岡県:6万1150円
  • 愛知県:6万34円
  • 三重県:6万1403円
  • 滋賀県:6万1172円
  • 京都府:5万8206円
  • 大阪府:5万7122円
  • 兵庫県:5万9138円
  • 奈良県:5万8961円
  • 和歌山県:5万7784円
  • 鳥取県:6万1502円
  • 島根県:6万2287円
  • 岡山県:6万1564円
  • 広島県:6万991円
  • 山口県:6万1120円
  • 徳島県:5万8797円
  • 香川県:6万1718円
  • 愛媛県:5万9792円
  • 高知県:5万7926円
  • 福岡県:5万8300円
  • 佐賀県:6万1084円
  • 長崎県:5万8617円
  • 熊本県:5万9907円
  • 大分県:5万8397円
  • 宮崎県:5万9234円
  • 鹿児島県:5万9659円
  • 沖縄県:5万4217円
  • その他:3万785円

国民年金の平均年金月額は、都道府県別に見ると5万円台から6万円台が中心で、全国平均は5万9431円です。

国民年金のみで老後の生活費をすべてまかなうことは、難しいと感じる人も少なくないでしょう。

厚生年金の上乗せがない自営業者やフリーランスなどは、とくに現役時代から貯蓄や資産形成を進め、年金以外の老後資金を計画的に準備しておくことが重要です。

7. 地域別の平均額だけで判断せず、自身の年金見込額を確認しよう

本記事では、厚生年金と国民年金の平均受給額や都道府県別の金額、厚生年金の受給額が決まる仕組みについて解説しました。

厚生年金の全国平均は月額15万289円ですが、都道府県別では最も高い神奈川県と最も低い青森県で月額4万円を超える差があります。

ただし、居住する地域によって年金額が決まるのではなく、現役時代に加入していた年金の種類、給与や賞与、厚生年金への加入期間などが受給額に反映されます。

平均額は地域全体の傾向を示すものとして捉え、自身の加入履歴や年金見込額を確認したうえで、必要に応じて老後資金を準備することが大切です。

60歳代・70歳代・80歳代の年代別の平均年金月額をより詳しく知りたい方はこちらの記事もご参考ください。
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中本 智恵
「同じ会社員なのに、なぜ知人と年金額が違うのか」と不思議に思う方もいるでしょう。実は都道府県による違いよりも、現役時代の年収や厚生年金への加入期間の違いが影響しているケースがほとんどです。特に転勤や転職で複数の地域・企業を経験された方は、加入期間の通算に漏れがないか、ねんきん定期便で確認しておくと安心です。
また、都市部で勤務した期間が長い方は平均額が高めに出やすい一方、それはあくまで地域全体の傾向であり、お一人お一人の受給額は加入記録に基づいて個別に決まります。平均額と見比べて不安に思うよりも、まずはご自身の「ねんきんネット」の見込額を確認することをおすすめします。
なお、老後資金を年金だけに頼らず準備しておきたいという方は、次章でご紹介する体験談も参考にしてみてください。