老後の主な生活費として厚生年金や国民年金がありますが、ひと月平均いくら受給できるのか知りたい方もいるでしょう。

現在受給中の方はほかの人がどのくらい受給しているのか知りたいかもしれませんね。現役世代の方にとっては、老後のための貯蓄をする上で現在の平均受給額を知ることは大切なことです。

また、厚生年金や国民年金に加入している方が亡くなった場合、その方に生計を維持されていた方は「遺族年金」を受給することができます。

しかし、受給する際には細かい要件を満たす必要があるため、いざというときに問題なく受給できるよう、必要な要件を確認しておくと安心です。

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1. 厚生年金と国民年金の平均年金月額はいくらか

厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和3年度における厚生年金の平均月額は14万5665円、国民年金の平均月額は5万6479円です。

厚生年金の過去5年間における受給額は、下表の通り14万5000円から14万7000円程度の間で推移しています。

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに筆者作成 

一方、国民年金の過去5年間の推移は、下表のように5万5000円から5万6000円程度の間で推移しています。

出所:厚生労働省年金局「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」 をもとに筆者作成 

2. 遺族基礎年金の受給要件とは

国民年金や厚生年金から受給できる年金は、前章で解説した老齢年金のほかに、被保険者が死亡した場合に遺族に支給される「遺族年金」もあります。

遺族年金には細かい受給要件が決められているので、万が一のときに備えて理解しておきましょう。

まずは「遺族基礎年金」から確認します。

「遺族基礎年金」は、国民年金の被保険者が亡くなった場合、その被保険者に生計を維持されていた「子どものいる親」または「子ども」が受け取れる遺族年金です。

遺族基礎年金を受給するためには、被保険者だった方の要件と保険料納付要件、遺族の要件をすべて満たしている必要があります。

2.1 亡くなった被保険者の要件

遺族基礎年金が受給できるのは、国民年金の被保険者が次のいずれかの要件を満たしている場合です。

  1. 国民年金の被保険者である
  2. 国民年金の被保険者だった60歳以上65歳未満の方で日本国内に住んでいた
  3. 老齢基礎年金の受給権者だった(※)
  4. 老齢基礎年金の受給資格を満たしていた(※)

※保険料納付済期間・保険料免除期間・合算対象期間を合わせた期間が25年以上ある

2.2 保険料の納付要件

亡くなった被保険者が、前述の1と2に該当する場合、死亡日の前日において次のいずれかの要件を満たしている必要があります。

  1. 死亡日の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間が3分の2以上ある
  2. 令和8年3月31日以前に死亡日があり死亡時が65歳未満の場合、死亡日の前々月までの直近の1年間に保険料の滞納がない

2.3 遺族の要件

遺族年金を受給することができるのは、死亡した被保険者に生計を維持されていた「子どものいる親」と「子ども」です。

「生計を維持されている」とは生計を同じくしていることをいい、たとえ別居していたとしても仕送りなどをしていた場合は生計を維持されていることになります。

また、前年の収入が850万円未満(所得が655万5千円未満)という収入要件も満たしている必要があります。

また、「子ども」とは18歳になった年度の3月31日までの子ども、または20歳未満で障害のある子ども(障害等級1級または2級)のことをいいます。生計を維持されていることが条件なので、結婚している子どもは対象外です。

3. 「遺族厚生年金」の受給要件

遺族厚生年金とは、厚生年金の被保険者が亡くなった際に、被保険者に生計を維持されていた遺族が受け取れる遺族年金です。遺族厚生年金を受給するための要件を確認していきましょう。

3.1 亡くなった被保険者の要件

遺族厚生年金を受給するためには、被保険者が次のいずれかに該当している必要があります。

  1. 厚生年金の被保険者である
  2. 厚生年金の加入中に初診日がある病気やけがにより初診日から5年以内に死亡した
  3. 障害厚生年金(1級・2級)を受給していた
  4. 老齢厚生年金の受給権者だった
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たしていた

3.2 保険料の納付要件

厚生年金の保険料納付要件として、死亡日の前日において、以下の要件を満たしている必要があります。

  1. 保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上ある
  2. 死亡日が令和8年3月31日以前で死亡時に65歳未満の場合、死亡日の前々月までの直近の1年間に保険料の滞納がない

3.3 遺族の要件

死亡した被保険者に生計を維持されていた遺族のうち、優先順位の高い方が受給できます。なお、遺族基礎年金との併給も可能です。

  1. 妻(子どものいない30歳未満の妻は5年間のみ受給可能)
  2. 子ども(18歳到達年度の3月31日までの子ども、または障害のある20歳未満の子ども)
  3. 夫(死亡当時に55歳以上の場合のみ)
  4. 父母(死亡当時に55歳以上の場合のみ)
  5. 孫(18歳到達年度の3月31日までの孫、または障害のある20歳未満の孫)
  6. 祖父母(死亡当時に55歳以上の場合のみ)

なお、受給者になる優先順位は以下の通りです。

出所:日本年金機構「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)」

4. まとめにかえて

厚生年金の平均月額は14万5665円、国民年金の平均月額は5万6479円です。過去5年間の受給額を見ても、おおよそこれくらいの金額で推移しています。

しかし、今後の受給額がどのように変化していくのかはわからないため、貯蓄など老後資金の準備をしておくと安心でしょう。

また、厚生年金や国民年金の加入者が死亡した場合、遺族年金を受け取れる可能性がありますが、受給要件が細かく決められているため要件を満たしているかしっかりと確認することが大切です。

特に、保険料の未納があると受給対象外となってしまうため保険料は滞納せずに納付しましょう。

参考資料

木内 菜穂子