日立製作所(6501)の株価が好調です。7月6日には52週間高値を更新しており、その時点での過去1年間の株価上昇率は約+75%上昇とTOPIXの+33%を大幅に上回っています。

とはいえ、過去5年間で見ると同社の株価は約5割の上昇でTOPIXの2.1倍を下回っているため、最近の株価上昇は出遅れ修正という見方が妥当かもしれません。

では、なぜ同社の見直し買いがここにきて継続しているのでしょうか。その理由としては以下の3点が推察されます。

第1は短期業績に対する不安の後退です。

2018年3月期の会社予想(国際財務報告基準)では、事業再編の影響により売上収益は減収予想ながら、調整後営業利益(売上収益から売上原価ならびに販売管理費を減じた指標)については増益が見込まれています。

その要因は、社会・産業システムに含まれる中東・東南アジアでの赤字案件が終息することや、情報通信、鉄道、建設機械、高機能材料などでの増収効果、および原価低減などです。

会社側は、今年度の調整後営業利益予想には▲250億円のリスク対応費用を織り込んでいるとコメントしており、想定外の環境変化に対してもある程度の備えがあると見られることも、短期業績への安心感をもたらしていると考えられます。

第2は、株価評価(バリュエーション)が比較的低いことです。

三菱重工との南アフリカ火力発電プロジェクトを巡る係争という不確定要素は残るものの、会社予想を前提とすると2018年3月期予想PERは11倍、2017年3月期実績ベースのPBRは1.1倍です。

これは日経平均株価のPER約14倍、PBR1.3倍と比べ低い水準に留まっているため、買い安心感につながっている可能性が考えられます。

第3は、事業再編(日立物流、日立キャピタル、日立工機、日立国際電気などの事業譲渡の実行やメインフレームのハードからの撤退など)がほぼ一巡し、今後はIoTプラットフォームの「ルマーダ」やM&Aを中心とする成長戦略の実行に経営の軸足がシフトしてきたことです。

ちなみに、ルマーダ関連売上高に関しては、2017年3月期実績の9,000億円に対して、2018年3月期には9,500億円、2019年3月期には1兆500億円に拡大していく方針を会社側では示しています。

また、M&Aについては2017年3月期から2019年3月期までの3年間で約1兆円を投じるとしています。こうした成長戦略が全体の業績にどう反映されるのか、今後注目したいと思います。

本稿は「個人投資家のための金融経済メディアLongine(ロンジン)」の記事のダイジェスト版です。全文は以下からどうぞ(有料記事)。
>>日立製作所(6501)の株価が最近好転している3つの理由

 

LIMO編集部