資産運用は20-30代から

前回、『投資の有無で広がる「退職準備格差」〜サラリーマンへのアンケート結果から』では退職準備額を手厚くするためにも資産運用は必要だという点を、年収に対する退職準備額の倍率を使って説明しました。

資産運用は大切だとはいえ、若い世代にとっては資産運用をすることがすぐに成果に結びつきにくいことから、ついつい先延ばしになってしまいがちです。

しかし、40代、50代になってある程度の資産がないと、その時点で資産運用をするべきだといわれてもなかなか動きにくいものです。その意味からも早めに資産運用に動くことは大切なはずです。

その考え方を別な面からも考えてみます。退職準備額を年収で割った「退職準備額の年収倍率」を年代別に調べたデータです。

年収の多い人が退職準備額を多く保有しているのはある意味、当たり前ですので、年収の何倍または年収の何年分の退職準備を用意しているかを見ようというのが、この「退職準備額の年収倍率」です。

投資をする効果は40-50代で明確になる

まず、投資をしていない人の年収倍率を見てみましょう。過去4回のアンケート調査の結果は、いずれもすべての年代でほぼ年収の1倍で推移していることがわかります。

20代より30代、40代、50代と年収は増えるはずですので、年代が上がっても1倍のままということは、ほぼ年収の増えた分だけ退職準備が増えている、言い換えると年収の増加分で退職準備を増やしていると言えます。投資をしていない人は年収の1年分の退職準備を用意していると見ることもできます。

一方で投資をしている人は、20代、30代では年収のほぼ1倍です。若干、投資をしていない人よりも高めと言えなくもありませんが、総じて1倍前後ですから投資をしていない人とそれほど大きな差がありません。

この数値を見る限り、20代、30代では投資をしているかどうかはそれほど退職準備の大きな差異になっていないと言えます。ところが、40代、50代となると、投資をしている人の退職準備は徐々に上昇して2倍台になっています。

この増加は所得の増加では説明できませんから、やはり資産運用の効果が出ているということでしょう。投資をする効果はこの年代になってやっと花開いてくることがわかります。

つまり、資産運用は20代、30代から始めても明らかな成果が出てくるのに時間がかかるということです。長い時間が必要になることから、忍耐が非常に重要になります。

年代別に見た退職準備額の年収倍率(単位:倍)

出所:フィデリティ退職・投資教育研究所、サラリーマン1万人アンケート(2010年、2013年、2015年、2016年)

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合同会社フィンウェル研究所代表 野尻 哲史