2. なぜ2023年度の年金額は目減りするのか
年金支給額は年度ごとに改定されるのに、なぜ2023年度の年金は実質的な目減りとなるのでしょうか。
これは年金支給額を決める仕組みである「マクロ経済スライド」が影響しています。
マクロ経済スライドは、少子高齢化が進む日本において年金制度を継続するための仕組みです。
少子高齢化が進む日本では、将来に向けて年金給付水準を調整しなくては、年金制度の存続が難しくなります。そのため、基本的に物価などの上昇率よりも年金支給額の増額率を抑えられます。
2023年度はこの仕組みにより、物価上昇率である+ 2.5%よりも年金支給額の増額率は0.3%少ないです。
また、2023年度の年金支給額は「キャリーオーバー分による調整」によりさらに支給水準が引き下げられます。
マクロ経済スライドは、物価などが前年比で下落した場合には支給水準を物価などの下落率に合わせて引き下げるだけで、それ以上の支給水準の引き下げはおこないません。
そして、本来支給水準を引き下げるべき金額は、物価上昇時に繰り越します。
2021年度と2022年度は物価が前年比で下落したため、今回の2023年度の年金支給額決定において2021年度と2022年度の繰り越し分の相殺(キャリーオーバー分による調整)がおこなわれました。キャリーオーバー分による調整は▲0.3%です。
そのため、2023年度の物価上昇率は前年比+2.5%ですが、マクロ経済スライドにより▲0.6%(▲0.3%と▲0.3%)の調整が入り年金増額率は+1.9%※1となっています。
※1:68歳以上の年金額。67歳以下は名目手取り賃金変動率(2.8%)からマクロ経済スライドにより+2.2%です。
これらの理由により、2023年度の年金支給額は引き上げられたものの実質的な支給水準は引き下げとなっています。