夏休みの宿題で最も厄介な「自由研究」

7月19日に日本の大半の地域で梅雨明け宣言が出され、いよいよ夏本番です。子どもがいるご家庭では、本格的に夏休みシーズンとなりました。

子どもにとっても親にとっても、夏休みの宿題は悩ましいものです。今も昔も、夏休みの宿題を計画的にこなす子どもは少数派だと思います。しかし、今の子どもたちは何かとスケジュールが詰まって忙しいので、親世代が子どもだった時よりも、よりいっそう計画的にこなさなくてはならないようです。その分、面倒を見る親も昔より大変になっているのではないでしょうか。

夏休みの宿題の中で”風物詩”とも言えるのが自由研究です。自由なだけあって、適当にこなしてしまうこともできるでしょう。しかし、きちんとやろうとすると、子どもにとっても、サポートする親にとっても、夏休みの宿題の中で最も扱いにくいものとなります。

自由研究で一番大変なのはテーマを自分で決めること

自由研究が扱いにくいのは、自分でテーマを決めなくてはいけないからでしょう。逆を言えば、テーマさえきちんと決まれば、自由研究の半分以上は終わったようなものと言えそうです。

ネットで検索すると、夏休みの自由研究を扱ったウェブサイトがたくさん出てきます。ベネッセホールディングス(9783)や学研ホールディングス(9470)のような教育関連のコンテンツを持つ会社が運営するウェブサイトだけではありません。マーケティングやブランディングの一環で、自由研究という切り口で自社の事業を紹介するウェブサイトもたくさんあります。中には工場見学を提案する企業もあります。これらは、大人が見ても楽しくなってくるくらい充実したコンテンツが多いように感じます。

見方を変えると、こうしたウェブサイトが多数存在するということは、それだけ夏休みの自由研究で大変な思いをしている親子が多いことを示しているようです。

お手本は小林製薬の社員がアイデアを出し続ける仕組み

話は少し飛びますが、小林製薬(4967)という家庭用品メーカーがあります。「あったらいいな」というキャッチフレーズとともに商品を紹介するテレビCMは、ほとんどの人が見たことがあるのではないでしょうか。同社は、ユニークなニッチ商品を投入し続ける会社として知られています。

10年近く前のことになりますが、小林製薬の方にお話しを伺う機会があり、「どうしたらあれだけのニッチ商品をコンスタントに出し続けられるのか」という話をさせていただきました。おっしゃっていたことは、以下の3点に集約されるかと思います。

  • 経営トップが開発初期段階から関与する
  • 社員の誰でも提案できる仕組みとインセンティブがある
  • 社員と社長とのコミュニケーションが近い

アイデアを出すのにノルマはないようです。また、社長との距離が近いので、良いアイデアを出すと社長自らメールを返して来るそうです。他にもいろいろインセンティブがあり、アイデア出しに積極的な社員が多く、その結果、連結で約3,000人の会社で年間15,000件のアイデアが出てくるそうです。単純計算で、毎年1人5件は出てくるのですから驚きです。

集まったアイデアの絞り込みの手法、短時間で商品化する手法なども秀逸なのですが、小林製薬の競争力の源泉は、コンスタントに社員から出続けるアイデアと、それを支える数々の工夫にあると考えられます。

小林製薬で行われているアイデア出しの仕組みは、自由研究のテーマ設定の作業にも大いに参考になりそうです。特に、まずはアイデアを数多く出すということと、ほめる(否定しない)コミュニケーションを続けてやる気を切らさないことは、両者に共通しているように思います。

親子で取り組む夏休みの自由研究は子どもへの贈り物

夏休みの自由研究は、特に子どもが小学生の間は、親子がコミュニケーションをとる良い機会です。親にとっては、子どもが何に興味を持っているのかを知ることができます。子どもにとっても、自分の考えていることを人にうまく伝える練習になります。

そして何よりも、「どうやって課題や目標を自力で設定すればよいか」ということの良い経験になります。そのためにも、単に自由研究のテーマを決めるだけでなく、決めるプロセスが大事だということをぜひ伝えてあげてほしいと思います。

以前、『あなたは我が子に働く背中を見せられますか?』の記事で、「子どもが親から何を吸収するか、それが教育という親から子どもへの贈り物であり、親にとっての大きな投資行動の効用を左右する」ということを書きました。親子で取り組む夏休みの自由研究もまた子どもへの贈り物であり、教育投資の一環と捉えれば、時間を割いてサポートする価値があるというものです。

藤野 敬太