4. 老後にはいくらお金が必要なのか
ここまでは、60歳代世帯の貯蓄額について、平均と中央値を確認しました。ここで気になるのが、「そもそも老後資金はいくら必要なのか」という点ですね。
先ほど触れた「老後2000万円問題」について簡単に整理しておきましょう。
上の図にある「標準的な夫婦世帯」が老後30年を暮らすには、公的年金以外に2000万円が必要という試算結果が、「老後2000万円」の根拠となりました。
ここでクローズアップされた「2000万円」という金額を貯蓄目標としている世帯もいるでしょう。
とはいえ、こちらは2017年の「家計調査」の結果に基づくものである点、介護費用が含まれていない点、住居費用が1万円台で計算されている点などに留意が必要でしょう。
そもそも年収が異なれば厚生年金の受給額も違います。健康状態やライフスタイルによって、老後に必要となるお金には世帯差が生じるでしょう。
働き盛りの現役世代であれば、まずは、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で、老後の年金見込み額を世帯単位で把握してみましょう。
日頃の生活費や、いまの貯蓄状況から、60歳や65歳になるまでに貯めるべき金額を知っておくことがたいせつです。
5.まとめ
今回は、老後資金を使い始めるタイミングや、60歳代世帯の貯蓄事情を紐解いていきました。将来資金について、自分自身で準備することがいかに重要であるかということが見えてきたかと思います。
30年止まっていた日本の物価が動き出した現状を考えると、老後は長く働くことに加えて、投資でお金を増やしていくという選択肢も必要になってくるでしょう。
投資にはリスクがありますが、少額でも若いころから運用を始めることで、時間を味方にしてお金を育てていくことも可能です。
参考資料
- 公益財団法人生命保険文化センター「『老後』とはいつから?」
- 厚生労働省「令和3年簡易生命表の概況 結果の概要 1 主な年齢の平均余命」
- 金融審議会「市場ワーキング・グループ第21回(厚生労働省提出資料)」
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査2021年(二人以上世帯調査)」
足立 祐一