貿易収支が大幅な赤字となっていますが、それ自体を憂いる必要はなさそうです(経済評論家 塚崎公義)。

昨年の貿易収支は「約20兆円」の赤字に

財務省「報道発表 令和4年分貿易統計(速報)の概要」(2023年1月19日)

2022年の貿易統計(速報)が公表され、貿易収支が約20兆円という巨額の赤字であることが話題となっています。

かつての日本は巨額の貿易黒字を続けていて、欧米諸国等との貿易摩擦に悩んでいたため、当時を知る筆者としては隔世の感があります。

根源的な原因は、輸出企業が海外現地生産を志向して、円安でも輸出が増えにくくなっていること、エネルギーを化石燃料の輸入に頼る体質が変化していないこと等です。

昨年はそれに加えてエネルギー価格等の高騰、半導体不足等による生産減、といった特殊要因が加わりました。

円安の影響は?

ちなみに、円安の影響はそれほど大きくなかったはずです。円安で輸入金額は膨らみましたが、輸出金額も同時に膨らんでいるからです。

円建て輸出比率のほうが若干高いので、少しは影響があったかも知れませんが、重要な要因とは言えないでしょう。

個々の原因については後述しますが、本稿が強調したいのは、「貿易赤字という言葉の持つ否定的なニュアンスに惑わされないように」ということです。