物価の上昇を肌で感じる中、賃金の伸び悩みに不安を感じる方も多いです。
昨今では働くシニアが増加しており、現役世代の方でも「定年退職後も働く」つもりの方もいるでしょう。
年金だけでは心もとない現代、健康である限り働き続けるつもりの方は多いものです。
そんな方は、「在職老齢年金」について知っておく必要があります。実は、給与と年金の合計金額によっては、厚生年金がカットされる可能性もあるのです。
くわしく見ていきましょう。
【注目記事】60歳代で「貯蓄ゼロ」は何パーセントか。厚生年金と国民年金の受給額も一覧表で見る
1. 在職老齢年金とは
在職老齢年金とは、厚生年金に加入しながら給与を得ている方が受け取る年金のことです。
この場合、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となります。
2022年4月の法改正により、基準となる給与額が大幅に上がりました。
2. 厚生年金が支給調整される金額の目安
日本年金機構の「在職老齢年金の計算方法」より、年金が減額となるフローチャートを見ていきます。
※下記における「基本月額」とは加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額、「総報酬月額相当額」とは、(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12 を指します。
2.1 在職老齢年金で調整した場合の年金支給月額
〈基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合〉
→全額支給
〈基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合〉
→基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
2.2 【65歳未満の方】2022年3月以前の在職老齢年金による年金支給月額
〈基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合〉
→全額支給
〈総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円以下の場合〉
→基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2
〈総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合〉
→基本月額-総報酬月額相当額÷2
〈総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合〉
→基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
〈総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合〉
→基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}
報酬にはボーナスも含まれる点に注意しましょう。
「ボーナスを12で割った金額」と「給与」と「年金の月額」の合計が47万円に近い場合、注意が必要です。
3. 厚生年金は月平均いくらなのか
そうは言っても、厚生年金の金額をあまり知らないという方もいるかもしれません。
2022年12月に公表された厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、厚生年金の月平均の受給額を見ていきましょう。
3.1 【厚生年金保険(第1号)】の受給状況
厚生年金(老齢基礎年金を含む)は基本的に2ヵ月に1度振り込まれます。これを月平均に均した金額は下記の通りと公表されました。
〈全体〉平均年金月額:14万3965円
- 〈男性〉平均年金月額:16万3380円
- 〈女性〉平均年金月額:10万4686円
※老齢基礎年金の金額を含む
さらに状況がわかるように、受給額ごとの人数もまとめてみました。
- 1万円未満:9万9642人
- 1万円以上~2万円未満:2万1099人
- 2万円以上~3万円未満:5万6394人
- 3万円以上~4万円未満:10万364人
- 4万円以上~5万円未満:11万1076人
- 5万円以上~6万円未満:16万3877人
- 6万円以上~7万円未満:41万6310人
- 7万円以上~8万円未満:70万7600人
- 8万円以上~9万円未満:93万7890人
- 9万円以上~10万円未満:113万5527人
- 10万円以上~11万円未満:113万5983人
- 11万円以上~12万円未満:103万7483人
- 12万円以上~13万円未満:94万5237人
- 13万円以上~14万円未満:91万8753人
- 14万円以上~15万円未満:93万9100人
- 15万円以上~16万円未満:97万1605人
- 16万円以上~17万円未満:101万5909人
- 17万円以上~18万円未満:104万2396人
- 18万円以上~19万円未満:100万5506人
- 19万円以上~20万円未満:91万7100人
- 20万円以上~21万円未満:77万5394人
- 21万円以上~22万円未満:59万3908人
- 22万円以上~23万円未満:40万9231人
- 23万円以上~24万円未満:27万4250人
- 24万円以上~25万円未満:18万1775人
- 25万円以上~26万円未満:11万4222人
- 26万円以上~27万円未満:6万8976人
- 27万円以上~28万円未満:3万9784人
- 28万円以上~29万円未満:1万9866人
- 29万円以上~30万円未満:9372人
- 30万円以上~:1万4816人
平均は14万3965円です。もし平均通り受給できるとすると、給与(ボーナスを12で割った金額を含む)が32万6000円を超えると、支給調整の可能性が出てきます。
ただし、上記からもわかるように、厚生年金の金額は男女差や個人差が大きいものです。
まずはねんきんネットやねんきん定期便などで、年金目安額を知ることが重要になるでしょう。
4. 制度を理解して老後対策を
定年退職後の生活に向けて、何も準備をしていない方は少ないと思います。
貯蓄や不労所得の準備など、さまざまな準備を始めていることでしょう。
しかし、対策をするには「制度を理解する」ことが重要になります。定年退職後もたくさん稼げる仕事に就けるのはとても魅力ですが、在職老齢年金には注意が必要です。
また、働き続けるつもりをしていても、健康状態によってうまくいかないケースもあるでしょう。
配偶者の介護により働けないというケースも想定されます。
こうした「リスク」をカバーするために、貯蓄や資産運用、保険などでバランスよく備えることが求められます。



