筆者が銀行員時代、シニア世代のお客様から、「昔は銀行にお金を預けておけば、10年で2倍になった時代もあった」とったお声をしばしば聞きました。

では、いまはどうでしょう。メガバンクなどの普通預金の金利は0.001%となっています。

100万円を1年間預けて、利息は10円。そこから税金が引かれ実際に手元に残る利息は約8円です。

店舗を持たないネット銀行であれば、金利はもう少し高いかもしれません。それでも、「預貯金だけで資産が殖える時代」でないのは明確でしょう。

また、公的年金の受給額は、2021年度、2022年度と2年連続引き下げられています。

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出所:日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」

シニアを取り巻く「お金事情」は、決してやさしいものではないでしょう。こんな中、いまの70歳代はどれほどの貯蓄を持っているのか気になる方もいるのではないでしょうか。

70歳代いえば、多くの世帯が既に年金生活をスタートしている時期。そんな70歳代でも「貯蓄がない世帯」が一定数いることが分かっています。

今回は、金融広報中央委員会の調査結果より、いまの70歳代の貯蓄事情を円グラフで見ていきます。

【注目記事】「60代の平均貯蓄額」はいくら?老後に必要な貯蓄額と今からできる対策3選

1. 70歳代の貯蓄額「平均と中央値」には大きな差が

まずは金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」から、70歳以上世帯の貯蓄額を見ていきます。

1.1 70歳・二人以上世帯「金融資産保有額」(金融資産を保有していない世帯を含む)

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出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年)」

  • 平均:2209万円
  • 中央値:1000万円

70歳代・二人以上世帯の貯蓄額平均は2209万円。2019年世間の注目を浴びた「老後2000万円問題」のラインは一見クリアしているようにも見えます。

とはいえ中央値に着目すると1000万円。中央値とは貯蓄額が少ない順、または多い順に並べたときに全体の真ん中にくる金額のこと。より実態に近い数字だと言われています。

平均値はどうしても、富裕層などの大きな値に引っ張られてしまうものです。

平均値と中央値で乖離がある場合、貯蓄が「ある人」と「ない人」の格差が大きいことが予想されます。次の章で、貯蓄額ごとの人数を見ていきましょう。

2. 70歳代の貯蓄格差はまさにピンキリ!

さきほどのグラフから、70歳代以上・二人以上世帯の貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)の分布をチェックしていきましょう。

2.1 70歳代以上の貯金事情・二人以上世帯「金融資産保有額」の分布

(金融資産を保有していない世帯を含む)

  • 金融資産非保有:18.3%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100~200万円未満:3.8%
  • 200~300万円未満:3.1%
  • 300~400万円未満:4.5%
  • 400~500万円未満:2.0%
  • 500~700万円未満:5.4%
  • 700~1000万円未満:5.6%
  • 1000~1500万円未満:10.3%
  • 1500~2000万円未満:6.0%
  • 2000~3000万円未満:11.9%
  • 3000万円以上:22.1%
  • 無回答:2.6%

中央値である「貯蓄1000万円以上」をクリアする世帯は全体の約半分。

さらに、約2割が「金融資産非保有」、つまり「貯蓄がない世帯」なのです。また、同じく約2割が「3000万円以上」を保有します。つまり、70歳代の貯蓄事情には、まさにピンキリとも呼べる格差があります。

退職金の受け取りや相続や贈与の有無とも大きな関係があるでしょう。とはいえ、若いころからコツコツと続けてきた貯蓄の成果があらわれた結果であると言えそうです。

3. そもそも「老後2000万円問題」とは

ここで、かつて話題となった「老後2000万円問題」について復習しましょう。

「2000万円」という数字が生まれた根拠について、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)をもとに整理します。

3.1 なぜ老後資金は「2000万円」と試算されたのか

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出所:金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)をもとにLIMO編集部作成

  • 実収入(主に年金):20万9198円
  • 実支出(主に食費):26万3718円

月々の赤字額=約5万5000円

老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円≒約2000万円

つまり、「標準的な」無職の夫婦が老後を30年生きるにあたり、公的年金だけでは2000万円が不足する、いう計算なのです。

ただし、こちらの収支は2017年の統計をもとに試算されたもの。実際に必要となる生活費は、家族構成やライフスタイル、そして健康状態などにより人それぞれですね。

「2000万円」という金額は、当時世間の注目を大いに集め、この金額を老後資金の貯蓄目安とした世帯もあるでしょう。まずは、「ご自身とご家族の場合、どのくらい必要か」という視点で考える必要がありそうです。

とはいえ、2000万円という数字は決して大きすぎる金額ではありません。

年金が減少傾向にあり、賃貸住まいが増え、さらにインフレが進む今後の社会において、2000万円以上が必要となるケースは決して驚く話ではないでしょう。

介護が必要となり民間の老人ホームなどに入所をした場合、初期費用だけで数百万円~1000万円単位での出費が発生することも珍しくありません。

4. 年金だけで生活できない高齢者は7割超!

さらに知っておきたい、シニアの厳しいフトコロ事情があります。ずばり、「年金だけで生活できる世帯は、ほんのわずかである」という点。

2022年9月に厚生労働省が公表した「2021年 国民生活基礎調査の概況」によれば、「公的年金・恩給を受給している高齢者世帯における公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%」の世帯はたった24.9%。全体の4分の1にとどまるのです。
 

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出所:厚生労働省「2021年 国民生活基礎調査の概況」

残りの75.1%は、働いて得た収入や、財産所得(いわゆる不労所得)のほか、仕送りを受けたり、個人年金などで補っているというのが現状です。

2年前の調査結果を見ると、公的年金や恩給だけで100%生活できる高齢者は48.4%。よって「年金だけで暮らしていける世帯」は、今後も減っていく可能性が高いと考えられます。

「人生100年時代」といわれる、長い老後を生きる現役世代の私たち。年金生活を支える老後のお金は、自分で工夫して準備していく視点が求められます。

5. 70歳の貯蓄格差から考えるマネー計画

今回は70歳代の貯蓄の実態を見ていきました。貯蓄がある人、ない人の二極化がグラフで明確になりましたね。教育費や住宅ローンに追われ、気づいたら老後の資金がないというご家庭も少なくないでしょう。

老後は誰にでもやってくるライフステージです。

貯金だけでうまく増やすことが難しくなっている現代、効率的に老後資産を形成する方法として挙げられるのが「お金に働いてもらうこと」すなわち「資産運用」です。

投資はリスクをともないますが、上手く付き合っていく方法もあります。自分にあった投資方法をみつけ、ライフステージを見据えた準備をしていきましょう。

参考資料