3. そもそも「老後2000万円問題」とは

ここで、かつて話題となった「老後2000万円問題」について復習しましょう。

「2000万円」という数字が生まれた根拠について、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)をもとに整理します。

3.1 なぜ老後資金は「2000万円」と試算されたのか

出所:金融審議会「市場ワーキング・グループ」(第21回 厚生労働省提出資料)をもとにLIMO編集部作成

  • 実収入(主に年金):20万9198円
  • 実支出(主に食費):26万3718円

月々の赤字額=約5万5000円

老後必要額=5万5000円×12カ月×30年(老後30年と仮定)=1980万円≒約2000万円

つまり、「標準的な」無職の夫婦が老後を30年生きるにあたり、公的年金だけでは2000万円が不足する、いう計算なのです。

ただし、こちらの収支は2017年の統計をもとに試算されたもの。実際に必要となる生活費は、家族構成やライフスタイル、そして健康状態などにより人それぞれですね。

「2000万円」という金額は、当時世間の注目を大いに集め、この金額を老後資金の貯蓄目安とした世帯もあるでしょう。まずは、「ご自身とご家族の場合、どのくらい必要か」という視点で考える必要がありそうです。

とはいえ、2000万円という数字は決して大きすぎる金額ではありません。

年金が減少傾向にあり、賃貸住まいが増え、さらにインフレが進む今後の社会において、2000万円以上が必要となるケースは決して驚く話ではないでしょう。

介護が必要となり民間の老人ホームなどに入所をした場合、初期費用だけで数百万円~1000万円単位での出費が発生することも珍しくありません。