投信の販売手数料は高すぎるでしょうか? 自分で運用するわけでもなく、右の商品を左の顧客に売るだけで3%程度が受け取れて、しかも「年会費」の約半分が受け取れるのであれば、美味しい商売だと言えるでしょうが、「高すぎる」か否かは評価が難しいでしょう。

一般に、手数料が高すぎるならば、ライバル企業が安売り競争を仕掛けてくるはずです。投信の販売が独占企業によって行なわれているわけでもないので、顧客は手数料の安い店で買えば良いのです。

自動車販売会社が自動車の値段を高く設定したからといって、監督官庁に文句を言われることはないでしょう。あるとすれば、顧客に逃げられて損をすることくらいです。投信は、販売手数料が明示されているだけ、自動車よりマシです。自動車販売会社が仕入れ値を公表しているとも思われませんから(笑)。

系列運用会社の商品ばかり販売しているのも、当然です。自動車販売会社だって同じでしょう。利益率の高い商品を顧客に勧めるのも、頻繁に買い替えを勧めるのも、当然です。自動車販売会社だって同じでしょう。

消費者教育が必要

「タバコが健康に悪いのに、タバコを顧客に販売するのはケシカラン」と言われることはありません。タバコを吸って健康を害したとしても、自己責任です。もちろん、他人の迷惑になるような吸い方をしてはいけませんが、それは別問題でしょう。

消費者保護として、リスクを開示することは、もちろん必要です。タバコの箱には喫煙による健康へのリスクが書いてありますし、電気製品のマニュアルには使用上の注意が細かく記載してありますが、投信のリスクについても販売店が「値下がりするリスクがあります」と顧客に明示していますから、問題ありません。

どうやら金融庁の問題意識としては、「自動車の品質やデザインは素人でも理解できるので、顧客が自分で価格と見比べて判断する。だから、割高な価格設定をしている店は売れ行きが落ちる」「一方で、金融商品は素人には理解が難しいので、金融機関の言いなりになってしまう客が多い」という認識でいるようです。

そうだとすれば、金融庁が注力すべきなのは消費者の金融知識を増やす「金融教育」でしょう。少なくとも金融関連用語に拒絶反応を持つ人を減らす努力は必要でしょう。

学生でも社会人でも、「公的年金の制度は?」「投資信託って何?」「大人になったら誰でも生命保険に加入すべき?」といった試験をしたら、白紙答案を出す人は多いと思います。そうした人に、白紙答案を出さずにすむような教育をしましょう。「分散投資のメリット」「インデックス投信とアクティブ・ファンドの違い」なども、できれば教育してほしいものです。

しかし、それ以前に「各社が日経平均連動型投信を販売しているので、各社の手数料率を比べてみましょう。ビールを買う時に、スーパーの特売のチラシを見比べるのと同じように」といった教育をしましょう。

消費者が賢くなっていけば、金融機関側も変わらざるをえないでしょう。金融機関の手足を縛るのではなく、健全な競争が繰り広げられることによって消費者の利益が守られるように、金融庁は努力してほしいものです。

また、金融庁の最近の姿勢に関する筆者の見解としては、こちらもご覧いただければ幸いです。

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塚崎 公義