4. 厚生年金「エグい個人差」は年収のせい。受給額の計算方法とは

厚生年金の受給額分布にみられる「エグい個人差」。これは、現役時代の年収が年金月額を左右する仕組みからくるものです。では、厚生年金の受給額はどのように決まるのでしょうか。

4.1 厚生年金受給額は、こうして決まる

厚生年金の老後の受給額は、次のような計算式を用いて算出されます。

  • 平成15年3月以前:平均標準報酬月額×7.5/1000×平成15年3月以前の加入月数
  • 平成15年4月以後:平均標準報酬額×5.769/1000×平成15年4月以後の加入月数

なお、計算のもとになる保険料額表には1等級の標準報酬月額8万8000円~32等級の65万円まで幅広い区分があります。[令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和4年度版)]

平成15年3月と4月を境に計算方法が変わるのですが、参考までに平成15年4月以後にお勤めをした前提で年金額の計算を行ってみます。

4.2 厚生年金の受給月額(目安)

〈前提〉

  • 厚生年金加入期間:40年
  • 定額部分は基礎年金の満額受給4.8万円で設定
  • 定額部分、報酬比例部分ともに百の位以下は切り捨て

〈年収別-目安月額〉

  • 年収300万円→10.8万円(基礎年金4.8万円+報酬比例6.0万円)
  • 年収400万円→12.6万円(基礎年金4.8万円+報酬比例7.8万円)
  • 年収500万円→14.2万円(基礎年金満額4.8万円+報酬比例9.4万円)
  • 年収600万円→17.7万円(基礎年金満額4.8万円+報酬比例12.9万円)

厚生年金の平均受給月額が14万4366円でしたので、平均受給額を受け取るためには年収500万が目安です。

年収300万円の場合には10.8万円と考えると、現職中の年収が将来の年金額に与える影響がかなり大きいことが分かりますね。

5. まとめにかえて

今回は、最新版の厚生労働省の資料から、今のシニア世代が受けとる公的年金額のリアルなデータを俯瞰したあと、厚生年金の受給額と、現役時代の収入の関係も解説しました。

いまの働き方や収入が、老後の年金収入にダイレクトな影響を与えることは確かといるでしょう。とはいえ収入を上げるといっても限界があります。また、選んだ職業によっては厚生年金に加入しない就業形態であることも。

まずは自分らしい働き方を選ぶことが大切です。老後に必要となるお金、そしてもらえる年金額は人それぞれ。リタイヤ後の暮らしを支えてくれる「老後資金」は、若いうちからコツコツと準備していけると良いですね。

預貯金をしっかり確保することはもちろん、資産運用を行いお金を増やすしくみを作るのも一案です。「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」や「つみたてNISA」などの税制優遇制度の活用を検討してもよいかもしれません。

参考資料

徳原 龍裕