老齢厚生年金には、一定の条件を満たせば年金額に上乗せされる「加給年金」という制度があり、年金版「家族手当」ともいわれています。

加給年金は、老齢厚生年金を受け取る人が65歳以上になったとき、一定の配偶者や子どもがいれば老齢厚生年金に加算されます。

同じ配偶者でも、老齢厚生年金の受給者との年齢差でもらえる場合、もらえない場合があります。

また、2022年4月からは、今まで加給年金の対象になっていた配偶者が、状況によっては外れてしまう場合もあります。今回は、それぞれのケースを詳しく説明します。

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1. 厚生年金に上乗せされる「加給年金」がもらえる要件3つ

加給年金をもらうには、老齢厚生年金の受給者が、以下のような3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 厚生年金の被保険者期間が20年以上あること
  2. 老齢厚生年金の受給権を取得した当時、生計を維持している65歳以下の配偶者、または18歳になった後の年度末までの子どもがいること(または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子がいる)
  3. 上記2の配偶者または子どもは、老齢厚生年金の受給者に「生計を維持されている」こと

これらの加給年金の要件に該当した場合、届出をすれば老齢厚生年金に加算されます。

1.1 生計を維持されている状態とは

「生計を維持されている」というのは、次の条件を満たしている場合をいいます。

  • 同居していること(もし別居していても、定期的に仕送りしていたり、健康保険の扶養に入っていたりすれば同居に該当します。)
  • 配偶者などの前年の収入が850万円未満(所得であれば655万5000円未満)であること

2. 年金版の家族手当である加給年金、どのくらい支払われるのか?

2022年(令和4年)の加給年金として支給される金額は以下のとおりです。

  • 【配偶者】22万3800円
  • 【1人目、2人目の子】それぞれ22万3800円
  • 【3人目以降の子】1人あたり7万4600円

さらに、配偶者の加給年金額には、3万3100円~16万5100円が特別加算されます。どのくらい加算になるかは、老齢厚生年金の受給権者の生年月日によって決まります。

2.1 老齢厚生年金の受給権者の生年月日ごとの「配偶者加給年金+特別加算額」

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出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

  • 1939(昭和9)年4月2日~1940(昭和15)年4月1日:25万6900円
  • 1940(昭和15)年4月2日~1941(昭和16)年4月1日:28万9800円
  • 1941(昭和16)年4月2日~1942(昭和17)年4月1日:32万2900円
  • 1942(昭和17)年4月2日~1943年(昭和18)年4月1日:35万5900円
  • 1943(昭和18)年4月2日以後:38万8900円

加給年金は年金版の家族手当といわれてますが、老齢厚生年金の受給者が65歳時点になった時点での子どもの年齢は、18歳になった年度末(1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子)となれば、該当するケースは多くないかもしれません。

一方、配偶者であれば「65歳未満」という制約をクリアするケースは多いといえます。次は、配偶者の年齢について詳しくみていきましょう。

3. 配偶者加給年金は妻よりも夫が年上であればあるほど長くもらえる

老齢厚生年金の受給者の加給年金が支払われる要件には、配偶者が「65歳未満」という制約があります。配偶者を妻とした場合、夫との年齢差で配偶者加給年金はどう変わるか以下にまとめます。

  • 【配偶者・年上の妻】老齢厚生年金の受給者自身が65歳になった時点で、妻の年齢はすでに65歳を超えています。残念ながら、配偶者加給年金はもらえません。
  • 【配偶者・年下の妻】老齢厚生年金の受給者自身が65歳になった時点から、年下の妻が65歳になるまでの期間、配偶者加給年金はもらえます。

夫が妻よりも年上であればあるほど、配偶者加給年金は、長い間夫の老齢厚生年金に上乗せされます。

なお、妻が老齢厚生年金の受給者、配偶者が年下の夫で、生計を維持している場合も同じ考え方になります。

3.1 配偶者が加入する厚生年金の被保険者期間20年以上で加給年金が支給停止

2022年4月以降の加給年金制度について改正がありました。

その内容は、配偶者の老齢厚生年金や退職共済年金などを実際に受け取っていなくても、受け取る権利がある場合(在職により支給停止となっている場合等)は、配偶者加給年金は支給停止されるというものです。

そもそも、加給年金の対象である配偶者に一定の年金収入があるのであれば、わざわざ家族手当を付ける必要はないということで見直しが行われました。

ただし、2022年3月時点で、以下の2つの要件のいずれかを満たす場合は、2022年4月以降も引き続き加給年金の支給を継続する経過措置が設けられています。

  1. 2022年3月時点で、本人の老齢厚生年金または障害厚生年金に加給年金が支給されている
  2. 2022年3月時点で、加給年金の対象者である配偶者が、厚生年金の加入期間が20年以上ある老齢厚生年金等の受給権があり、全額が支給停止されている

もし、2022年3月時点で既に配偶者加給年金が上乗せされている場合は、配偶者が65歳になるまで今と同じく加給年金をもらうことができます。

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出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

4. 加給年金の申込みは自分で申請する必要あり

加給年金の対象となった場合、自分で手続きすることになり、以下の4つの書類を準備します。

  1. 老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届
    日本年金機構のホームページからダウンロードできます。
  2. 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本(コピー不可)
  3. 世帯全員の住民票の写し(コピー不可)
  4. 加給年金の対象者(配偶者や子)の所得証明書など(コピー不可)

提出先は、近くの年金事務所または街角の年金相談センターです。ご不明な点は、ねんきんダイヤルまたは近くの年金事務所等でご確認をお願いいたします。

5. 振替加算がつくのは配偶者が65歳から

加給年金は、老齢厚生年金の受給者に対し、その配偶者が65歳になるまでの間、家族手当として支払われるものです。

配偶者が65歳になれば、支払われていた加給年金は打ち切られてしまいます。このとき、配偶者が老齢基礎年金を受けられる場合、一定の基準を満たした配偶者の老齢基礎年金に加算されることを振替加算といいます。

5.1 振替加算の要件

振替加算がつく主な要件には以下の2つがあります。

  1. 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
  2. 厚生年金の加入期間が20年未満である人

5.2 振替加算は配偶者の老齢基礎年金に上乗せ

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出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

出所:日本年金機構「加給年金額と振替加算」

振替加算の額は、22万3800円~0円の間で、年齢ごとに決まっています。大正15年4月2日から昭和2年4月1日生まれの昭和61年4月1日に59歳以上の人が一番多くもらえます。

徐々に減額となり、昭和41年4月2日以後生まれの昭和61年4月1日に20歳未満の人は0円になります。

振替加算を受けるためには、配偶者の年齢に注意しましょう。

【配偶者・年上の妻】

妻を扶養する夫が年下で、配偶者加給年金をもらっていない場合、扶養されている年上の妻は振替加算の手続きが必要になることがあります。その際、夫が65歳になり、厚生年金保険に加入期間が20年以上である必要があります。
年上の妻は、振替加算をもらうため、「国民年金 老齢基礎年金額加算開始事由該当届」を提出することになります。

【配偶者・年下の妻】

妻を扶養する夫が年上のため、配偶者加給年金をもらっている場合、65歳に達した年下の妻は、振替加算の手続きの必要はありません。

6. まとめ

加給年金と振替加算は、老齢厚生年金の受給者と配偶者の年齢が要件に含まれていますので、注意深く対象になるかならないか確認して、ご不明な場合は、近くの年金事務所等に問い合わせするようにしましょう。

参考資料

舟本 美子