2カ月に一度、偶数月に振り込まれる年金。12月15日は今年最後の支給日です。
公的年金の受給額は、2022年4月分(6月支給分)から、前年より0.4%減額されています。「0.4%」という数字は一見微々たるものに見えますが、長い目で見ると大きな金額になりますね。
年を重ねれば、健康面での不安が増えます。長く働き続けるつもりがリタイアせざるを得ないこともあるでしょう。公的年金は老後の暮らしを支えるメインの収入源ですから、しっかり受け取りたいものです。
実は、「0.4%の減額」に加え、秋(10月)から新たに年金の振込額が減った人もいることをご存知でしょうか。今回は、いまのシニア世代の受給額事情をみたあと、年金から差し引かれるお金について整理します。
【注目記事】厚生年金220万円なら「後期高齢の保険料」が10万円天引き!容赦ない手取りに愕然
厚生年金・国民年金「みんな、いくらもらっている?」
さいしょに年金の基本的な情報をおさらいしましょう。
日本の年金制度のしくみと、今のシニア世代がどのくらい年金を受け取っているかを見ていきます。
年金制度は2階建て
日本の公的年金制度は「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」の2階建て構造です。
1階部分は国民年金・2階部分は厚生年金1/5
出所:所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成
ベースとなる「国民年金(基礎年金)」は、原則として日本に住む20歳以上の人に加入義務があります。加えて、サラリーマン(会社員・公務員など)は厚生年金に加入します。
老後に受け取る年金は、現役時代に加入していた年金制度によって異なります。自営業やフリーランス、専業主婦(夫)」など、厚生年金加入期間がない場合、老後に受け取るのは国民年金のみです。
厚生年金・国民年金の受給額
いまのシニア世代が受け取る年金額をグラフで見ていきましょう。
厚生年金
厚生年金の受給額分布2/5
出所:「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
厚生年金の平均月額
- 全体:14万4436円
- 男子:16万4742円
- 女子:10万3808円
国民年金(基礎年金)
国民年金の受給額分布3/5
出所:「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成
国民年金(基礎年金)の平均月額
- 全体:5万6252円
- 男子:5万9040円
- 女子:5万4112円
老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況によって個人差が生じます。厚生年金の場合は、毎月の給与に応じて決定された保険料を納め、それが加入年数とともに老後の年金額に響きます。
平均額を鵜呑みせず、「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」などでご自身の見込額を把握することが大切ですね。
次では、年金の盲点ともいえる「天引きされるお金」について触れていきます。実は、年金は「額面通りには受け取れない」のです。
【厚生年金・国民年金】老後の年金は「額面通りには受け取れない」
さきほど触れた年金受給額は、いわゆる「額面」の金額。ねんきん定期便に記載された年金見込額も同様です。
実は、老後の年金は額面通りに受け取れません。現役時代に給料から色々なお金が控除されていたのと同様に、老後の年金からも税金や社会保険料が天引きされます。
天引きされる4種類のお金を、以下で整理していきましょう。
年金から天引きされるお金1. 個人住民税
住民税は前年中の所得に対して課税されます。
一定の条件を満たすと年金からの天引きで住民税を納めることになりますが、収入が一定額に満たなければ非課税となりますので、支払い義務が発生しないケースもあります。
年金から天引きされるお金2. 所得税および復興特別所得税
年金収入が一定以上になると所得税が発生し、年金からの天引きで納めることになります。
「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税を徴収される時に復興特別所得税もかかります。
ただし、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税となります。
年金から天引きされるお金3. 介護保険料
介護保険料は40歳から支払義務が発生します。65歳以降は健康保険と切り離して単体で納付しますが、年間の支給額が18万円以上の方は年金から天引きされます。
要介護・要支援認定を受け、介護サービスの利用が始まってからも、介護保険料の支払いは一生続きます。高齢化が進むなか、介護保険制度の運営は厳しくなっており、今後も保険料の負担は高まると考えられます。
年金から天引きされるお金4. 健康保険料
国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料も、原則年金からの天引きで納めます。
最大で4つのお金が年金から天引きされるため、額面と振込額は一致しないことが一般的です。
年金振込額が10月から変わったケースとは?
ここからは、年金の振込額が10月から変わるケースについて解説していきましょう。
年金から天引きされる税金や保険料の中には10月に「本決定」される、住民税や介護保険、健康保険などがあります。これらは6月に決定された前年度の所得をもとに、1年度分の金額を正式に決定するフローになっています。
では、8月支給分までの年金からは何も引かれていなかったのでしょうか。
実は8月までは所得が確定していませんが、10月から急に負担が増えることを避けるため、「仮徴収」として前年2月と同額を天引きしていたのです。
「仮徴収」と「本徴収」4/5
出所:厚生労働省「保険料(税)の特別徴収」
よって、4月・6月・8月に天引きしたお金を「仮徴収」、10月・12月・2月に天引きするお金を「本徴収」といいます。
株の売買や不動産の売却などで一時的に所得があがった場合、翌年の税金や保険料負担が高まるというケースがありますので注意が必要です。
その他、年の途中で65歳を迎えた方なども、天引きのスタートにより振込額が変わるケースがあります。「年金と所得」の関係についてあらかじめ知っておけると安心ですね。
今後「天引きされるお金」は増えるかも
年金から天引きされるお金のうち、健康保険料や介護保険料については今後も負担額が増える可能性が。この先の収入増加が見込みにくい年金世帯にとって、厳しい負担となりそうですね。
【介護保険】第1号保険料の推移。20年間で2倍以上に!5/5
出所:厚生労働省「介護保険制度の概要」
グラフからは、介護保険料がこの20年で2倍以上になっていることがわかります。要介護認定者は増える一方、財源が追いついて状態です。
また、原則75歳以上が加入する後期高齢者医療制度でも、この10月に負担割合が2割に引き上げられた方がいます。今後はさらに負担が増えていくことが見込まれます。
まとめにかえて
今回は、老後の年金事情をながめたあと、年金から天引きされるお金についても整理しました。
「ねんきんネット」や「ねんきん定期便」で把握できるのはあくまでも年金の額面です。そこから天引きされるお金がある点については、ぜひ頭の片隅に入れておきたいところですね。
また、既に年金生活をスタートされている場合、株式や不動産の取引で利益をあげたり、勤めていた会社を退職したりした翌年は、天引きされるお金が増える可能性がある点に注意しておきたいものです。
参考資料
長井 祐人
