年金を増やしてもあまり意味がないって本当?

日本年金機構からも「年金生活者支援給付金、医療保険・介護保険等の自己負担や保険料、税金に影響する場合がある」と公表されているとおり、年金暮らしになったからといって社会保険料や税金と無縁というわけにはいきません。

また、これらの金額が「所得が上がるほど高くなる」のは現役時代と同様ですから、増額した年金からは「増額前よりも多くのお金」が天引きされることになります。

所得の金額によっては「所定のライン」に引っかかってしまい急に高額となることも。

東京都に住む75歳夫婦の後期高齢者医療保険を例にみてみましょう。

出所:東京都後期高齢者医療広域連合「保険料試算用シート(令和4年度分)」を参考にLIMO編集部作成

夫の年収が150万円から200万円に、妻の年収が150万円から200万円に上がったケースでは年間保険料も大きく増えていることが分かります。

医療保険料だけでなく介護保険料や税金もあがってしまった場合、せっかく年金額が50万円増えても手取りでは大して増えていないということが起こってしまいます。

年金を繰下げている期間、自己資金で生活をやりくりする苦労を考えると「思っていたほどの魅力はない」と気づいてしまう夫婦もいるようです。

ただし、夫200万円・妻80万円のケースと夫200万円・妻150万円のケースを比べると年間収入に70万円も差があるにも関わらず、保険料は同額です。

年収が高い夫婦の方が負担は軽いことになりますから、ボーラーラインを超えない範囲であれば繰下げ受給のメリットを最大化できるともいえます。

とはいえ年金や税金のしくみは複雑ですから、メリットを逆算して繰り下げ受給期間を調整できる人は少ないでしょう。