金融所得課税を強化する事は必要ですが、NISAの拡大とセットで行なうべきです(経済評論家 塚崎公義)。

高額所得者ほど所得税率が低くなる逆転現象とは

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出所:国税庁「No.2260 所得税の税率」

出所:国税庁「No.2260 所得税の税率」

所得税は累進課税が原則です。給料が非常に高い人などは所得税率が45%であり、地方税も加えると所得の半分を税金として払う事になりかねません。

しかし、例外があります。株や不動産の売却益等は、税率20%を選択することができるのです。そこで、株の配当や譲渡益などで何億円も稼いでいる人が数千万円の給与所得者より税率が低いという事が起き得るわけです。

こうした状況を改善するため、政府は金融資産からの所得にも一般の所得税と同じ税率を課すという事を検討しているようです。

その事自体には、筆者も賛成ですが、注意すべき点もあります。それは、庶民の株式投資を阻害しない、ということです。

高所得者のみに適用すると庶民が困る

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Yusuke Ide/istockphoto.com

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金融資産所得が1億円を超える人にだけ普通の所得税率を課す、という考え方もあるでしょうが、それは避けるべきです。

それは、庶民投資家が「自分の金融資産所得は1億円を超えていない」事を証明する必要が出てくるからです。

税務署は、誰の金融資産所得が1億円を超えているかを調べるために、すべての投資家に金融資産所得を申告(確定申告)するように求めるでしょう。
そうでないと、100社の金融機関で100万円ずつ稼いでいる人に課税する事ができないからです。

現在は、金融機関に口座を開設する時に「税率20%」を選択すれば、その金融機関で稼いだ金額は税務署に申告する必要はありません。
そうでなければ、株式投資をしている人は「配当収入がありました」などと申告をしなければならないでしょう。
それは大変面倒な事です。

そんな事になれば、政府が庶民に「貯蓄から投資へ」「貯蓄から資産形成へ」などと呼びかけている一方で、「投資をすると確定申告が必要となるらしいから、やめておこう」という庶民を増やしてしまいかねません。

ちなみに、銀行に預金口座を持っているだけの人も、金利収入が1円でもあれば申告する必要が出てくるかも知れません。
さすがに、それは勘弁して欲しいので、(外貨預金は別として)普通の預金の金利は対象から除いて欲しいですが。

NISAの枠を大幅に拡大しよう

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Mono/istockphoto.com

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そうした問題に対応するためには、NISAの枠を大幅に拡大すれば良いでしょう。
「庶民のみならず、金融資産が1億円程度の上級庶民も対象外とする」ということで、NISAの枠を1億円程度に拡大すれば良いのです。

1億円以上の株を持っている人には、配当所得等を確定申告してもらいましょう。そういう人は、税理士を使うでしょうから、手間もかからないでしょうし、「面倒だから投資をやめておこう」などとは思わないでしょう。

起業してオーナー社長になり、持株を売却して億万長者になった人にも、やはり普通の所得税率を適用しましょう。「そんな事をしたら起業の意欲が削がれてしまう」という可能性は皆無ではありませんが、起業して大金持ちになる人には、大儲けの半分が税金で取られても十分大金持ちだ、というくらいに稼いでもらえば良いでしょう。

金持ちから税を取る、という時の金持ちとは

ここで筆者が問題としておきたいのは、「金持ちから税を取れ」という人の持っている金持ちのイメージです。
日本では、給与所得の高い人をイメージする人が多いようですが、それは高額所得者であって、金持ちとは限りません。

何億円も株を持っていて、配当収入だけで毎日豪遊しているような人の税率が低くて、汗水たらして働いて年収が2000万円の人に高い税率を課すのは、公平を欠いているように思います。

本来であれば、金融資産等も名寄せして各自の資産状況を税務署が把握した上で、資産家には資産税を課す、という事も検討しても良いと思います。

巨額の資産を持っていて、全額を銀行預金にしていて金利収入は少なく、住民税が非課税になっているような人には、税金を払ってもらいたいものです。

そのためには、金融機関の口座などにはマイナンバーを登録を義務付ければ良いでしょう。そうすれば、相続の時にも被相続人の資産状況を税務署が容易に把握できるので、相続税が増えるのではないでしょうか。

本稿は、以上です。なお、本稿は厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。

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参考資料

塚崎 公義