まだまだ暑い日が続いていますが、夏休みも後半戦。いよいよ夏期講習会も終わりを迎え、中学受験の足音が徐々に聞こえてくる季節がやってきます。

その一方で、小学校低学年のお子さんがいる家庭では「受験させるかどうか」を真剣に検討する機会も増えてきます。

コロナ禍を契機に、私立中の手厚いサポートや公立学校では体験できない豊富なカリキュラム、個性ある教育方針に魅力を感じる家庭が増え、首都圏を中心に中学受験熱は冷めるどころかヒートアップしています。

その反面、教育費がかかるという事実もあります。それでは、子どもが二人いる世帯年収600万円という家庭でも中学受験に挑戦することは可能なのでしょうか。

課金ゲームをやり過ごしたいが

一般的に、中学受験は課金ゲームと揶揄されているほどお金がかかります。そのため、「中学受験というゲーム」に参入するには世帯年収が1000万円以上ないと厳しいとも言われています。

実際、文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査」の「世帯の年間収入段階別、項目別経費の構成比」をみると、私立中学のボリュームゾーンは1200万円以上の35.5%です。

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出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」よりLIMO編集部作成

出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」よりLIMO編集部作成

世帯年収1000万円以上1200万円未満が16.8%のため、私立中学に通う生徒の家庭は1000万円以上の世帯が52.4%を占めていることになります。

こうした公的なデータもあり、中学受験をして私立中学に子どもを通わせるには、1000万円以上の年収がないと厳しいと広く受け入れられているわけです。

実際、同調査での私立中学に通う生徒の一年間にかかる学校教育費や学校外教育費は140万6000円と、公立中の約2.9倍かかります。

合格を目指すために塾に通い、入学してからも毎月12万円以上の教育費がかかる。そして、兄弟姉妹の年の差によっては極端に教育費が膨れ上がる年があります。

2歳差の場合、どちらも私立中学に進学すると単純計算で毎月24万円が教育費として消えていく年が一年間あることになります。

そして、教育費のピークはその先の大学進学時にやってきます。私立中学を目指すのであれば「本当に乗り越えられるのか」を考えて「習い事の整理」「家計の無駄の洗い出し」などをし、教育費を備えておくようにしましょう。

このように、世帯年収600万円の家庭で中学受験に挑戦することは経済的な面でみると楽な道のりではありません。

奨学金や教育費免除のハードル

さて、私立中のなかでも世帯年収によっては教育費の免除や奨学金が出る学校があります。

例えば、男子御三家の開成中学・高等学校では入学後に家計が急変した生徒への「授業料特別免除」「就学支援奨学金」と、志願者が出願以前または出願時に申請する「開成会 道灌山奨学金」の支援策があります。

しかし、一般的に見れば家計が安定している世帯年収600万円の家庭向けではありません。

道灌山奨学金の条件の一つが「年間所得218万円以下、または給与収入のみの場合収入額400万円以下の世帯の子弟」になっています。

とはいえ「平成30年度子供の学習費調査」によると、私立中に通う生徒の世帯年収の構成のうち600万円から799万円世帯の割合も16.8%と少なくないため、中学受験が無謀というわけでもありません。

一方、教育費の捻出に祖父母からの援助があったり、住宅ローンや家賃の支払いがほとんどないというケースも十分考えられます。

そのため、「16.8%もいるのだから我が家も挑戦できる」と数値を素直に受け止めることは危険です。純粋にお給料の稼ぎ以外で資産を保有している「年収600万円世帯」も存在しています。

確実に乗り越えられる選択をする

子供2人とも中学受験を考えている場合、教育費が控えめな学校や奨学金の種類が豊富で条件が緩い私立中学を選んでみたり、国立や公立中高一貫校も志望校にしたりするなど「家計に負担がかからない現実的な選択」をしていくことが大切です。

通塾をスタートしても、季節講習は小学5年生以降から受講するなど教育費のかけ方を考えていきましょう。大切な学年になってきたらガツンと受けるけれど、必要でなければ受けないという賢い選択を意識してください。

また、高校になると国の「高等学校等就学支援金」もあり学校に関わる教育費の負担が幾分減ります。とはいえ、今後は大学受験が待ち受けています。

私立の中高一貫校を狙う場合は「中学3年間でどのくらいかかるのか」をしっかり計算し、大学受験に向けて塾に通うかどうか、学校の指定校推薦を狙うかなど多角的に判断してから中学受験を決めておくようにしましょう。

中学受験以上に重要な大学受験なのに、中学受験で無理をしてしまったため大学選びの際に「教育費を出せない」といったことにもなりかねません。一人目は出せたが、二人目は諦めさせるという兄弟姉妹間に扱いの差が出ると、遺恨が残ります。

「何となく中学受験をしたい」「仲良しの子も受験するみたいだから」と周りに流されることのないよう、家計と中学受験や合格後にかかるリアルなお金をキッチリ計算し、中学受験できるかどうかを判断してください。

参考資料

中山 まち子