諸外国の住宅ローン金利が上がる中「日本もそろそろ……?」と考え、繰り上げ返済を検討されている方も多いのではないでしょうか。

繰り上げ返済によって利息軽減や総返済額の減少などの効果が得られますが、目的に応じて適切なやり方とタイミングを見極めなければ、思わぬリスクが生じる可能性もあります。

1. 住宅ローンの繰り上げ返済とは?2つの方法

住宅ローンの繰り上げ返済とは、返済期日を前に残債の一部または全部を返済することをいいます。繰り上げ返済の方法には「期間短縮型」と「返済額軽減型」があります。

1.1 住宅ローンの繰り上げ返済1. 期間短縮型

「期間短縮型」とは、返済期間の短縮効果が得られる繰り上げ返済方法です。繰り上げ返済する金額はすべて元金の返済に充てられ、返済期間が短縮されます。

期間短縮型の繰り上げ返済で軽減できるのは、短縮した期間分の利息です。

1.2 住宅ローンの繰り上げ返済2. 返済額軽減型

一方で「返済額軽減型」の繰り上げ返済は、期間ではなく月々の返済額を軽減する方法です。

繰り上げ返済する金額は元金の返済に充てられる点は期間短縮型と同様ですが、繰り上げ返済時点から完済までの期間でならして元金を減らすという点が異なります。利息の軽減効果は、期間短縮型に劣ります。

2. 住宅ローンの繰り上げ返済の適切なタイミングを考察

住宅ローンの繰り上げ返済は「早くやるべき」「このタイミングでするべき」と一概にいえるものではありません。

残債や家計の状況、将来のライフプランなどを踏まえ、相対的に判断する必要があります。

2.1 繰り上げ返済のタイミング1. 時期が早いほど効果が大きい

「期間短縮型」「返済額軽減型」いずれも、繰り上げ返済の時期が早いほど利息の軽減効果は高くなります。これは、返済当初のほうが利息の割合が大きいためです。

2.2 繰り上げ返済のタイミング2. 「住宅ローン減税」も考慮

住宅ローン減税を受けている間は、減税効果を踏まえて繰り上げ返済の適切なタイミングを検討しましょう。

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出典:国土交通省「住宅ローン減税」

住宅ローン減税は、毎年のローン残高の0.7%を上限に所得税と一部住民税が控除される制度です。繰り上げ返済によってローン残債が減ることで、減税効果が損なわれる可能性もあります。

必ずしも、住宅ローン減税中の繰り上げ返済が損になるというわけではありません。住宅ローン減税では、次の3つのうちいずれか最も低い金額がその年の控除額となります。

  1. 所得税と住民税額
  2. 控除上限額
  3. 年末の住宅ローン残高の0.7%

たとえば、住宅ローン残高の0.7%が「1.所得税と住民税額」や「2.控除上限額」よりはるかに高いという状況では、繰り上げ返済が住宅ローン減税額に影響しないこともあります。

とはいえ、住宅ローン減税は1年限りの控除制度ではありません。減税効果と繰り上げ返済の効果を比較したい場合は、FPなどに相談するのがおすすめです。

2.3 繰り上げ返済のタイミング3.繰り上げ返済機能付きの住宅ローンも選択肢

「一定額、貯金ができたら、その都度、繰り上げ返済していきたい」と考えている方は、繰り上げ返済機能付きの住宅ローンを検討してみては?

機能は金融機関によって異なりますが、たとえば返済口座に指定額以上の残高がある場合、あるいは変動金利タイプに限定されますが、契約時に指定した返済額を下回る場合に自動で繰り上げ返済してくれるローン商品があります。

3. 住宅ローンの繰り上げ返済のやり方と注意点

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息の軽減や総返済額の減少などの「効果」以外のところにも着目して判断することが大切です。

3.1 住宅ローン「繰り上げ返済」の注意点1. やり方は金融機関によって異なる

フラット35では、繰り上げて返済できる額は100万円以上。インターネットによる一部繰り上げ返済は10万円以上から可能です。いずれも、手数料はかかりません。

ただし、金融機関によっては繰り上げ返済手数料がかかったり、1万円など少額から繰り上げ返済が可能だったり、条件もやり方も様々。金利タイプごとに手数料を変えている場合もあります。

繰り上げ返済前には必ず、住宅ローンを借り入れている金融機関のやり方・条件・手数料を確認しましょう。

3.2 住宅ローン「繰り上げ返済」の注意点2. 金利タイプの違いを理解しておく

全期間固定金利の場合は、借り入れ当初に元金の減り方や利息がわかりますが、変動金利や固定期間選択型は金利変動があるため、金利上昇リスクを踏まえて繰り上げ返済の判断をする必要があります。

とくに、返済額が急激に変わらないための「5年ルール」や「1.25倍ルール」の適用がない固定期間選択型ではご注意を。固定金利期間中、安易に繰り上げ返済してしまうと、固定期間終了時に返済額が大幅に上がった場合、返済に対応できなくなってしまう可能性があります。

一概にはいえませんが、たとえば固定期間終了時の金利を見てから繰り上げ返済をしたり、金利上昇リスクが懸念される局面には期間短縮型ではなく返済額軽減型の繰り上げ返済をしたりするなど、適切な判断が必要です。

3.3 住宅ローン「繰り上げ返済」の注意点3. 期間を短縮しすぎない

「返済額軽減型」の繰り上げ返済より「期間短縮型」のほうが利息軽減効果は高いものです。

しかし、一度、短縮した期間を延長することは容易ではありません。住宅ローンを借り換える場合にも、返済残存期間の範囲で返済期間を設定するのが一般的です。

繰り上げ返済後、病気や減収などにより住宅ローンの返済が厳しくなることもゼロとは言い切れません。総返済額や利息の軽減が図れるのは魅力的ではありますが、将来を見据えた返済計画を立てることが大切です。

3.4 住宅ローン「繰り上げ返済」の注意点4. 繰り上げ返済と団信の関係

団体信用生命保険(団信)は、債務者(住宅ローンを契約している人)に万一のことがあったときに残債が弁済される保障制度です。「残債がゼロになる保険」ですから、繰り上げ返済によって残債を減らせば、その分、補償額も減るということは認識しておきましょう。

4. 住宅ローンの繰り上げ返済は「軽減効果」以外も見るべき

繰り上げ返済は、当然ながら、すればするほど利息の軽減効果は高いものです。しかし、総返済額や利息を軽減することだけを考えて実行するのではなく、今回お伝えした注意点も踏まえて判断する必要があります。

とくに全期間固定金利以外の金利タイプを選択されている場合は、金利上昇リスクも視野に入れ、適切な時期と方法を検討し、慎重に実行しましょう。

参考資料