2022年10月から、パート勤務の方でも厚生年金に加入しやすくなることをご存知でしょうか。

「扶養内」でパートをしている方や、これから仕事復帰を考えている方などは、ぜひ知っておくべき制度となります。

そもそも厚生年金に加入するとなると、どのようなメリットがあるのかも気になりますよね。保険料が発生すれば、その分毎月の手取り金額は減ってしまいます。

このような負担を上回るメリットがあるのか、制度の概要とともに見ていきましょう。

【注目記事】「厚生年金の受給額」まさか都道府県で差があるなんて! 国民年金の平均とも比較

1. そもそも厚生年金の加入条件とは

日本は国民皆年金制度となり、誰もが国民年金や厚生年金に加入します。このうち厚生年金とは、会社員や公務員等が加入する被用者年金となります。

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出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

では、会社員であれば誰でも厚生年金に加入できるのでしょうか。

実は勤め先側の条件と、従業員側の条件があるのです。

1.1 厚生年金加入の対象となる勤め先

被保険者(短時間労働者を除く)の総数が常時500人を超える事業所

1.2 厚生年金加入の対象となる従業員

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
  • 月額賃金が8万8000円以上
  • 1年を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

※休学中や夜間学生は加入対象です。

これらの条件を満たす場合、厚生年金へ加入できるという仕組みになります。

2. 2022年10月から厚生年金に加入できるパートが増える

2022年10月から、厚生年金の加入条件が拡大されます。まず事業所側の条件であった「常時500人を超える事業所」は「常時100人を超える事業所」に拡大されます。

また従業員側の条件である「1年を超える雇用の見込みがある」は「2ヵ月を超える雇用の見込みがある」に短縮されます。

これにより、小さい規模の事業所であっても対象となる可能性が増え、短期間しか働かない見込みの方も厚生年金に加入しやすくなるのです。

さらに2024年10月からは「常時51人を超える事業所」への拡大が予定されており、今後厚生年金の加入者はますます増えることが予想されます。

3. パートが厚生年金に加入するメリットとは

パートでも厚生年金に加入しやすくなるとはいえ、そもそも厚生年金に加入することにメリットがあるのか気になります。

これまで夫の保険上の扶養に入っていた主婦などは、保険料負担がありませんでした。厚生年金に新たに加入するとなると、今までなかった保険料の負担が発生します。

保険料がいくらになり、その分どれだけのメリットが生まれるのかを見ていきましょう。

4. パートの「厚生年金保険料」負担の目安

月額賃金が8万8000円以上となると、厚生年金に加入することになります。

厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト」によると、年収106万円(月収8万8000円)の場合の保険料は1万2500円です。ここには年金保険料だけでなく、同時に加入する健康保険の保険料も加わっています。

なお、保険料は会社が同額を負担しています。本来は2万5000円である保険料を、会社と折半して支払っているイメージです。

この他、年収ごとの厚生保険料の目安は次の通りです(こちらには健康保険料が含まれていない点にご留意ください)。

  • 120万円:9000円
  • 150万円:1万1600円
  • 200万円:1万5600円
  • 250万円:1万8300円
  • 300万円:2万3800円

※年金保険料は概数であり、実際の金額とは異なります。

これらの年金保険料を支払うことで生まれるメリットは、「将来の年金受給額が増える」ということです。

国民年金(基礎年金)だけであった場合に比べ、厚生年金に加入するとどれだけ年金が増えるのかも見てみましょう。

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出所:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」

出所:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」

年収が高いほど、さらには加入期間が長いほど、将来の年金額が高くなることがわかります。国民年金の年額は約78万円なので、月額で6万円台という方も多いです。

こう考えると、少しでも年金額を上乗せさせるために、厚生年金への加入はメリットの高いことだと考えられます。

5. 厚生年金は「老齢年金」以外の機能もある

「年金」と聞くと「老後に受け取れる老齢年金」というイメージが強いものですが、実はそれだけではありません。

老齢年金以外の2つの保障と、健康保険の充実という側面を見ていきましょう。

5.1 障害年金の充実

一定の障害を負うと、障害年金が受給できます。国民年金加入者にも「障害基礎年金」がありますが、厚生年金に加入することで「障害厚生年金」を上乗せできます。

加入期間が短くても300月分の給付が確保されたり、障害等級3級以下でも対象になったりというメリットがあります。

5.2 遺族年金の充実

年金には、生計維持者が亡くなったときの遺族保障という機能もあります。

国民年金加入者にも「遺族基礎年金」がありますが、支給条件はやや厳しくなっています。

遺族厚生年金があれば支給対象となる可能性はあがり、給付額も上乗せできます。

5.3 健康保険の充実

厚生年金に加入するということは、会社の健康保険にも加入することになります。

これまで夫の扶養に入っていたパート主婦の場合、夫の健康保険に加入していたことになります。

しかしこの場合、傷病手当金や出産手当金の対象外でした。十分な保障を受けていたとはいえないでしょう。

もし自分で健康保険に加入すれば、これらの制度の対象となります。病気や怪我で働けないとき、あるいは出産を理由に求職するときなどに、手厚い保障が受けられるようになります。

6. パート主婦が知っておきたい厚生年金のすべて

厚生年金の加入対象が拡大されることに伴い、パート勤めの方でも厚生年金に加入しやすくなります。

もしかすると、職場では「手取りが減るのに強制的に加入させられて不満」という声があがるかもしれませんね。加入対象とならないよう、月収を抑えるか迷う場面も出てくるかもしれません。

しかし、制度には複数の側面があることを忘れないようにしましょう。目先の手取りが減るものの、将来の年金受給額はあがります。これまで「扶養内」にこだわるあまり抑えていた方も、心置きなく働けるようになるかもしれません。

さらには遺族年金や障害年金、健康保険上のメリットもあります。

こうした面を多角的に捉え、自分ごととして考えてみましょう。年金の受給額をシミュレーションしたいときは「ねんきんネット」が参考になります。

ぜひこの機会に、厚生年金の理解を深めてみてくださいね。

参考資料

太田 彩子