1. フラット35の不正利用とは? 事件の全容

2018年9月に発覚したフラット35の不正利用について、まずはその事件の概要を見てみましょう。

1.1 居住用物件にしか使えないフラット35を投資用物件に不正利用

本来フラット35などの住宅ローンは、本人もしくは親族が居住するための物件購入にのみ利用可能な融資です。家賃収入を得るための投資用物件の購入にはアパートローンや事業用のプロパーローンを利用しなければなりません。

この原則に従わず、実際は投資用物件の購入であるにもかかわらず、居住用物件の購入であるかのように偽って住宅ローンを不正利用したのが「フラット35の不正利用」でした。

住宅ローンと不動産投資ローンの違いや投資用物件に住宅ローンを使ってはいけない理由については、以下の記事で詳しく解説されています。ぜひ参考にしてください。
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不動産投資ローンと住宅ローンの違いと5つの金融機関の特徴
フラット35を悪用した不動産投資

1.2 物件価格・融資額の水増し

もう一つ、フラット35の不正利用として「物件価格・融資額の水増し」も見られました。
実際の物件価格とは異なる水増しされた価格で偽の売買契約書を作成し、融資額を水増ししようとしたわけです。
実際に物件購入に支払う額よりも多くの金額を得られるため「余ったお金で消費者ローンや自動車ローンが返済できる」などと勧誘され、つい乗ってしまった投資家が多かったのではないかと推測されます。

不正利用のほとんどのケースにおいて、投資目的での利用と物件価格の水増し両方の不正が同時に行われていました。

1.3 事業者グループの巧みな罠にかかった物件オーナー

フラット35の不正利用には、紹介者・売主・不動産仲介業者・サブリース業者などで構成される事業者グループが関与しています。
知識の浅い投資初心者であればなおさら、こうしたプロの事業者グループを相手に冷静に判断することは難しいでしょう。たとえ不正利用に当たると分かっていても「みんなやっている」「業界では当たり前」などと言われ、つい不正に加担してしまうケースも多かったのではないかと考えられます。

一方、書類の改ざんなどを物件オーナーが把握していないケースもあったようです。融資額が水増しされていることを知らされず「ただ署名・捺印すればいい」という言葉をうのみにして、知らない間に犯罪に加担してしまったと考えられます。