この記事の読みどころ
トランプ大統領の政策に方針の修正が感じられます。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューでの発言に加え、シリア、北朝鮮、アフガニスタンでは軍事行動や軍隊派遣を行っています。恐らくその背景は、現実路線への転換を模索したためと思われます。
トランプ米大統領:WSJとのインタビューで、ドルは「強過ぎる」と発言
トランプ米大統領は2017年4月12日付の米紙WSJとのインタビューで、「米ドルは強くなり過ぎていると思う」などと述べ、ドル安支持を示唆しました。
インタビューの中でトランプ大統領は、2018年2月に任期が終了するイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長を再指名する可能性に含みを残す発言をしています。また、「低金利政策」が望ましいとも述べています。大統領の発言を受け、米国債利回りは低下し、ドルは下落しました。
どこに注目すべきか:ドル政策、低金利、イエレン再任、北朝鮮
トランプ大統領の政策に方針の修正が感じられます。WSJとのインタビュー内容(図表1参照)に加え、シリア、北朝鮮、アフガニスタンでは軍事行動や軍隊派遣といった展開も見られます。恐らくその背景は、現実路線への転換を模索したためと思われます。
まず、為替政策並びに政策金利について、トランプ大統領はドル安、低金利支持を想定させる発言をしています。
しかし、本格的に政策転換してドル高や低金利を目指すというよりも、リップサービスに近い発言と思われます。そもそもドル高や米国国債利回りが上昇したのは政策金利の引き上げに加えて、トランプ大統領が掲げる減税やインフラ投資など財政拡大政策が押し上げの背景と見られます。
減税など自らが提案してきた財政政策を引っ込めるというなら、本格的な政策転換とも言えますが、そのような可能性は低いと思われます。トランプ大統領が維持している方針は、米製造業の回復と米国内の雇用創出です。ドル安と低金利が「望ましい」と述べるのは自然な流れと思われます。
ただし、ひょっとすると大規模な財政拡大政策から、小規模もしくは現実的な財政政策を提案する地ならしなのかもしれません。いずれにせよ、トランプ大統領は5月に詳細な予算教書を提出する予定で、政策内容を確かめる上で注目しています。
次に、イエレン議長の再任に現実路線への転換が感じられます。トランプ大統領はビジネス流の損か得かを政治に持ち込んだことと、オバマ前大統領の政策を否定することに熱心すぎた傾向が見られます。
以前トランプ大統領は、「イエレン議長はオバマのために政策をしている」といったトーンの批判を行っていました。しかし、損か得かを、政治家らしく人気が出るか出ないかに置き換えると、イエレン議長を再任しないのは「損」と判断したのかもしれません。
イエレン議長の過去の実績に、好き嫌いはあるにせよ、極端な落ち度は無い中、慣行として2期にわたるのが通常のFRB議長職で、来年イエレン議長を無理に外すことに対して、疑問に思う人も多いと思われるからです。
軍事行動については、医療保険制度改革(オバマケア)修正の見送りなど内政失策の後だけに、型通りならば、国民の関心を外に向けるための行動とも解釈されます。一方で、北朝鮮問題の解決を中国にパスするため、為替操作国への指定を見送り恩を売る(そもそも為替操作国とすることに無理があるようにも思われますが)という現実路線を選択したためとも思われます。
ドル高けん制や低金利がトランプ政権の現実路線への微修正から出た発言であるならば、市場のある程度の調整は想定されるものの、本格的にドル安や利回り低下が定着することを、この発言だけで想定するのは描きにくいのかも知れません。