富山市の路面電車は「移動手段」以上の魅力がある

さらに、今回実感したのが、老若男女問わず全国に路面電車のファンが多いことです。富山市内を走る路面電車は、旧型のレトロな車両と、近代的でスタイリッシュな車両が走行しているのですが、そのどちらもがワクワク感をもたらす移動手段として捉えられています。

実際乗ってみて、レトロな車両と、近代的な車両のどれに当たるかは、ちょっとしたお楽しみでした。

乗るなら素敵なデザインのものに乗りたいし、見るだけでもワクワクしたい。そもそも、移動するだけが目的なのであれば、自家用車もせいぜい数種類でよいわけです。乗り物のデザインは、「移動手段」にさらなる魅力としての付加価値を与える魔法のようなものかもしれません。

町の中をゆっくり走るユニバーサルな移動手段は、多様な人を巻き込みながら歩行や町の再発見の機会を創出し、乗り物自体の魅力でもワクワク感をもたらしているようです。スピードが遅いことがもたらす価値、これは「移動は早ければ早いほどいい」という従来の価値観に一石を投じるものかもしれません。

実は、富山駅には南北に路面電車があり(南が「市内電車」、北が「富山港線(旧富山ライトレール)」)、これらがつながったのは2020年と、比較的最近です。

富山市が2021年秋に実施した、利用状況の調査を通じた南北接続の効果検証によると、接続前と比べて富山駅の南北をまたぐ利用者は平日で2.4倍、休日で2.8倍の利用増が見られ、街の回遊性も高まったそうです。