10歳の子どもにもわかるサッカースキルが違う選手、セリエAとセリエCの差

ところが試合が始まる前、ベネツィアのスタメン11人の準備を見ていると、事前のトレーニングには参加していなかった選手が一人だけいる。きっとそれまでは別メニューをこなし、コンディションを確認するため試合に出てきた選手のようです。

他方、ベネツィアのスパーリングパートナーとして呼ばれたのは、セリエD(イタリア4部)に昇格したばかりの地元クラブ。つい先頃まで5部リーグでやっていたチームですが、4部への昇格を控えたこの夏に相当の補強をしたということで、一人ひとりの技術レベルはベネツィアと比べても大きな差はないように見受けられます。

案の定、試合は開始から拮抗した展開が続きます。

しかし、そんな中で、開始早々から一人だけ明らかに違う次元のプレーを見せる選手がいる。

そのベネツィアの中盤にいる一人というのは、先ほど触れた〝事前のトレーニングには参加していなかった選手〟。ボールを止める技術、パスの精度、カバーリングに入る動きの質も何もかもが他の選手たちとは明らかに一線を画していて、とりわけ30mを超える長いパスに見る精度の違いは際立っています。

その一人の名は、シモーネ・ベンティヴォッリョ(2016年当時31歳)。2年前(2013/14シーズン)までセリエAのクラブ(キエーボ)に所属していた選手です。キエーボはセリエAにおける下位クラブ、その地味なクラブでプレーする地味な選手に過ぎなかったとはいえ、やはりセリエAでの実績を持つ選手がセリエCに来ると、さすがに違いを見せます。

なるほどここまで違うものかと思いながら、カテゴリーを隔てる壁の分厚さを改めて思い知らされるように感じながら私は試合に見入っていました。

私の隣では地元のお爺さんが可愛い孫と一緒にボールの行方を追っています。そして、まだ10歳になったばかりだという孫が、お爺さんに「あの上手い選手は誰なの?」とベンティヴォッリョを指差しながら聞いています。10歳の子でもすぐにわかるほど、セリエAとCの差は歴然です。