「年金生活者へ5000円程度の臨時支給をする」という案をめぐり、さまざまな声があがっています。
4月から年金の額が0.4%引き下げられることにより、給付金で支えるというのがその趣旨です。
厚生労働省が2022年1月21日に発表した資料によると、夫婦2人分の標準的な年金額は21万9593 円。前年度に比べ、903円下がることになります。
「老後に約22万円ももらえるなら十分」という声もありますが、本当にそうなのでしょうか。
今回は年金受給額の決まり方や目安についてご紹介します。
2022年度の新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額の例
まずは2022年度の目安となる年金額について解説します。年金には国民年金と厚生年金があるため、一つずつ見ていきましょう。
国民年金(基礎年金)
- 2021年度:6万5075 円
- 2022年度:6万4816 円(前年度からマイナス259円)
国民年金の場合、保険料を40年間きっちり納めることで上記の満額を受給できます。
未納や免除の期間がある場合、満額から差し引かれるということに。
自営業や専業主婦などは国民年金のみの受給となるので、たとえ満額を受給できても心許ない金額ですね。
仮に夫婦2人とも満額を受給できるとしても、2022年度の年金額は夫婦合計で約13万円になります。
厚生年金(国民年金を含む夫婦2人分の標準的な年金額)
- 2021年度:22万496 円
- 2022年度:21万9593 円(前年度からマイナス903円)
厚生年金の場合、満額という概念がありません。
報酬額に応じた保険料を納め、その保険料と加入期間に応じた金額が受給できるという仕組みです。
ちなみに上記の標準額とは、以下の定義のもとシミュレーションされた金額です。
「平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9 万円)で 40 年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額)の給付水準」
つまり「43.9万円の給付水準で40年間働いた夫と、ずっと専業主婦だった妻」に限定した試算額です。
40年間約40万円の報酬を得ていた人が「標準的」なのかはさておき、限られたケースであることはわかりますね。
では実際の受給額はいくらなのでしょうか。今度はモデル年金ではなく、実際に受給されている年金額を見ていきましょう。
厚生年金を受給している人数や受給額
ここからは厚生労働省の「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2021年12月)を参考に、実際の厚生年金の受給者数や平均受給額を見ていきます。
厚生年金の平均月額
- 〈全体〉平均年金月額:14万4366円
- 〈男性〉平均年金月額:16万4742円
- 〈女性〉平均年金月額:10万3808円
※国民年金の金額を含む
厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数
- 1万円未満:10万511人
- 1万円以上~2万円未満:1万8955人
- 2万円以上~3万円未満:6万6662人
- 3万円以上~4万円未満:11万9711人
- 4万円以上~5万円未満:12万5655人
- 5万円以上~6万円未満:17万627人
- 6万円以上~7万円未満:40万1175人
- 7万円以上~8万円未満:69万4015人
- 8万円以上~9万円未満:93万4792人
- 9万円以上~10万円未満:112万5260人
- 10万円以上~11万円未満:111万9158人
- 11万円以上~12万円未満:101万8423人
- 12万円以上~13万円未満:92万6094人
- 13万円以上~14万円未満:89万7027人
- 14万円以上~15万円未満:91万3347人
- 15万円以上~16万円未満:94万5950人
- 16万円以上~17万円未満:99万4107人
- 17万円以上~18万円未満:102万4472人
- 18万円以上~19万円未満:99万4193人
- 19万円以上~20万円未満:91万6505人
- 20万円以上~21万円未満:78万1979人
- 21万円以上~22万円未満:60万7141人
- 22万円以上~23万円未満:42万5171人
- 23万円以上~24万円未満:28万9599人
- 24万円以上~25万円未満:19万4014人
- 25万円以上~26万円未満:12万3614人
- 26万円以上~27万円未満:7万6292人
- 27万円以上~28万円未満:4万5063人
- 28万円以上~29万円未満:2万2949人
- 29万円以上~30万円未満:1万951人
- 30万円以上~:1万6721人
平均は14万4366円で、ボリュームゾーンは9万円以上~10万円未満となっています。
実際に夫婦2人で受給されている年金はいくらが目安?
これら参考にして、実際に受給されている目安の年金額を計算してみましょう。
ちなみに国民年金の満額は2021年度で6万5075円です。「会社員の夫と専業主婦の妻」という夫婦を想定し、年金受給額を算出します。
なお、妻は40年間未納期間がなく、満額の国民年金が受給できるとします。
1.夫が平均通りの厚生年金を受給する場合
夫14万4366円+妻6万5075円=20万9441円
2.夫がボリュームゾーンである9万5000円の厚生年金を受給する場合
夫9万5000円+妻6万5075円=16万75円
3.夫が自営業の場合
夫6万5075円+妻6万5075円=13万150円
いかがでしょうか。
いずれにしても、モデル年金である約22万円よりも少ない年金額となりました。
もちろん平均以上の報酬を得ている方はこれ以上の年金を受給していますし、妻が働いていた場合も合計金額があがるでしょう。
一方で自営業夫婦は年金が少なく、また2017年7月までは年金加入の必要期間が25年と長く、受給資格がない人も存在しました。
一律で「約22万円ももらえる年金受給者がうらやましい」とは言い切れないことがわかります。
さらに総務省の「家計調査年報(家計収支編)2021年」によると、65歳以上無職世帯の支出額は26万247円です。
22万円の年金を受給していたとしても赤字ですね。
月々の支出は抑えられても、医療費や介護費用、家の修繕費用など突発的な支出は出てきます。
これらを月平均にすれば、22万円以上の支出になることは十分考えられるでしょう。
年金に頼らない自己努力は等しく必要に
標準的な夫婦2人分の年金と、実際のリアルな受給額について見ていきました。
「老後生活に年金が22万円あれば十分」という考え方も一理ありますが、支出をそれ以下に収めるのは意外に難しいことが、総務省のデータからもわかります。
また年金の額は個人差が激しいので、「年金生活者にはゆとりがある」というのも少し楽観的と言えるでしょう。
将来に同じくらいの年金がもらえる保証はどこにもありません。
年金の額はねんきん定期便などで確認する習慣をつけるとともに、自分で資産をつくる努力もしていくことが必要になるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和4年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(2021年12月)
- 日本年金機構「令和3年4月分からの年金額等について」
- 総務省「家計調査年報(家計収支編)2021年」3-2
LIMO編集部
