S-TRAIN、春のダイヤ改正の注目株

3月も早1週間以上が過ぎ、いよいよ春が近づいてきました。鉄道ファンにとってはダイヤ改正という楽しみがやってきます。

今回の春のダイヤ改正で筆者が注目するのが「S-TRAIN」です。

この列車、西武ホールディングス(9024)傘下の西武鉄道の新型通勤車両「40000系」を使用し、有料座席指定列車として運行する場合に「S-TRAIN」と呼ぶことになっています。

S-TRAINの意味

S-TRAINのSには3つの意味が込められています。お出かけ、通勤・通学というさまざまなシーン(Scene)に対応すること、全席指定でゆったり快適に座席(Seat)に座れること、直通運転で乗り換えがないこと(Seamless)を意味します。

S-TRAINの要、西武鉄道の「40000系」

さて、この列車のカギを握るのが新型車両40000系です。

通常はロングシートといって扉と扉の間を横長に座席が並んだ状態になりますが、進行方向に座席を回転させて使用すること(クロスシート)が可能です。これはロング・クロス転換車両と呼ばれます。

クロスシート使用時にはコンセントも用意されています。また子供連れや車いす・ベビーカー利用者に使いやすい「パートナーゾーン」が設置されており、長時間運行に対応してトイレもあります。

つまり、通常はロングシートとして通勤通学用に使用しますが、必要に応じてクロスシートにして有料座席指定列車に変更ができるというところがミソです。

S-TRAIN、いつどこを走る?

S-TRAIN、平日と休日では走行区間が異なります。

平日は、西武鉄道の所沢と東京地下鉄有楽町線の豊洲を朝晩片道約1時間で結びます(指定料金は大人510円)。

土日は、西武鉄道の西武秩父・飯能・所沢と横浜高速鉄道の元町・中華街を、途中、東京地下鉄、東京急行電鉄を経由して結びます(指定料金は大人最大1,060円)。元町・中華街行きが2本、元町・中華街発が3本とされています。

指定券購入は

指定券の購入は駅窓口、指定券券売機、西武鉄道インターネット予約サービス、西武鉄道チケットレスサービスで可能です。おそらく今後はチケットレスサービスが普及していくと思います。

将来の鉄道の姿を先取り?

鉄道事業を少し長い目で見ると、東京周辺へ人口がいっそう集中することが予想される一方で、少子化や就労人口の減少、テレワークの増加、自動車の自動運転技術普及の可能性など、鉄道事業には逆風になりかねない要因が見えてきています。

従来の「速くて正確な大量輸送」重視から「快適性」へとシフトが求められるのは、関東の大手私鉄も例外ではないでしょう。

S-TRAINという試みは、汎用性の高い車両を導入し投資効率を高めようとしていること、自然環境の良い秩父と異国情緒あふれる横浜という異質なエリアを結ぶ鉄道会社の垣根を越えた試みであることが注目されます。そして、何よりもチケットレスで座席指定が可能だという点が大いに注目されます。

最近は通勤通学の時間帯に着席可能列車を運行することが流行ですが、このS-TRAINはさらに一歩先を行く試みだと思います。今後は、たとえば二子玉川から日光までをシームレスでつなぐような列車が登場すれば面白いのではないでしょうか。まずはS-TRAINの行方に注目しておきたいところです。

LIMO編集部