住宅ローン減税の改正による影響
改正によって、さまざまな変更点が出た住宅ローン減税。
SNSやニュースでは、控除率の縮小が目立って報道されたため「改悪」だと話題になりましたが、すべての人にとって改悪になるわけではありません。
たとえば平均所得層(年収400万円)の場合は控除率が1%だとしても、所得税や住民税の支払い額によって頭打ちになり、実際には1%分も控除を受けられていないケースが多いからです。
したがって制度の改正によって影響を受けるのは、限度額の目一杯まで控除されている高所得者に限定されます。
では、収入によってどの程度影響が異なるのか、モデルケースを見てみましょう。
年収800万円のAさん
- 新築住宅(長期優良住宅)
- 借入金額:4500万円
- 金利:0.5%
- 借入期間:35年
- 配偶者あり
- 扶養家族なし
控除率1%の場合に10年間で受けられる控除額:384万円
控除率0.7%の場合に13年間で受けられる控除額:330万円
Aさんの場合、改正前の控除率1%で計算すると、10年間で受けられる控除額は384万円です。一方で、改正後の0.7%で計算すると、13年間で受けられる控除額は330万円になり、その差は「54万円」。改正前後で控除額に大きな差が出ました。
では、年収400万円のBさんのケースを見てみましょう。
- 新築住宅(長期優良住宅)
- 借入金額:3000万円
- 金利:0.5%
- 借入期間:35年
- 配偶者あり
- 扶養家族なし
控除率1%の場合に10年間で受けられる控除額:165万円
控除率0.7%の場合に13年間で受けられる控除額:215万円
Bさんの場合、改正前の控除率1%で計算すると、10年間で受けられる控除額は165万円ですが、改正後の0.7%で計算すると、13年間で受けられる控除額は215万円になります。その差は「50万円」。
Bさんの場合は、適用期間が13年に延びたことによって、細く長く控除を受けられるようになったので、改正前よりも改正後のほうが控除の恩恵を受けられる計算になったのです。
ローン残高の1%まで控除を受けられていなかった人は、控除率の縮小よりも、適用期間の延長によるメリットの方が大きくなったことが分かります。
これらのことから、平均所得層の人にとって住宅ローン減税の改正は「改悪」ではなく、むしろ「改善」されたとも言えるでしょう。