固定資産税を払いすぎていた原因とは

では、なぜこのような課税ミスがあったのでしょうか?

今回の課税ミスの原因は、建築当初までさかのぼることにより判明してきました。建築当初は、1階フロアーの一部が高齢者施設だったのです。

高齢者施設は商業施設ですので、住宅用地の特例の適用はありません。よって、現状の課税内容と一致します。

その後、高齢者施設部分が居住用フロアに改装され、すべて居住用の建物に変わり、その状態のときにA様が購入されたということです。

通常このようなケースでは、所有者から「住宅用地認定」の申請をしなければなりません。
 
住宅用地等に関する申告については、次の通りです。

1.住宅用地等に関する申告

固定資産税・都市計画税の住宅用地には課税標準の特例措置が設けられており、税負担が軽減されています。この特例措置を正しく適用するために、「固定資産税の住宅用地等申告書」により申告をしてください。

2.申告が必要な場合

土地や家屋の状況に変更があった場合で、具体的には次のとおりです。

  • (1)住宅を新築又は増築した場合
  • (2)住宅の全部又は一部を取り壊した場合
  • (3)住宅を建て替える場合
  • (4)家屋の全部又は一部の用途を変更した場合(例 住宅から店舗に、店舗から住宅に変更した場合等)
  • (5)土地の用途(利用状況)を変更した場合(例 住宅の庭であった土地を駐車場として利用するようになった場合等)

3.申告をする人

  •  1月1日時点の土地の所有者

4.申告期限

  • 申告が必要となる事由が生じた年の翌年の1月31日まで

ただ、上記のように申請しても翌年度から住宅用地の適用が可能と市町村から言われるケースが多いです。そこで、今回は

  • A様が物件を購入された時には全て居住用の建物だった
  • これまで、住宅用地の見直しについて、役所から確認を受けたことがなかった

という点に着目しました。つまり、最終的に還付を実現するために、「住宅用地認定の申請によってのみ次年度から変更可能です」と言われて市町村から還付のお断りをされないように考えました。
 
もしそう言われたら、「物件を取得した時点で、建物用途や住宅用地の説明を一切受けていない」という主張をして、下記の点について確認する方針を決定しました。

  • 次年度から申請のみによって見直す制度だったとしても、所有者が変わった場合には確認通知する義務があったはず
  • 制度自体、所有者は馴染みがない。本来であれば、通知義務があったのにしなかった点に問題があるのではないか

 これにより、5年分の固定資産税の還付に成功し、翌年度以降も固定資産税が減ることとなりました。課税ミスは誰にでも起こりうるので、是非皆様もチェックしてみてください。

不動産投資専門 叶税理士法人/叶会計事務所 萱谷 有香