近年、残業代請求が広がっています。一昔前のサービス残業が当たり前だった時代は過ぎましたが、まだまだ法定通りの残業代を支給しない会社は数多く存在します。
そこで今回は、残業代請求をめぐる状況や法改正について、弁護士の視点から解説していきます。
労働関係の訴訟 約4000件に
最高裁判所の令和2年度司法統計によると、残業代請求を含む労働事件の訴訟数は近年右肩上がりで上昇。令和2年には年間3960件の労働関係訴訟が提起され、平成4年以来過去最高の数字となっています。
サービス残業に対して泣き寝入りせず、残業代請求を行うことが広がっていますが、そうは言っても勤務中の会社に対して声を上げるのは躊躇される方が多いでしょう。
私も、勤務中の会社に対して正面から残業代請求をすることを積極的にお勧めはしません。私が残業代請求をご依頼いただくのも、退職後に前職に対して残業代を請求するケースが大半です。
では、退職してから、勤務中の未払い残業代を全部請求できるのでしょうか。
その場合に立ちはだかるのが、時効の壁です。
これまで、残業代などの賃金請求は、賃金発生日から「2年」で時効となり消滅してしまっていました。つまり、10年勤続した会社に対して退職後に残業代請求をしようとしても、最大で2年分までしか請求できない(残りの8年分は時効で消えてしまっている)こととなっていたのです。