老後一人になった時の年金生活は?

ここで、平均的な厚生年金受給者を例にして、夫が亡くなった後の妻の生活をイメージしてみましょう。

厚生労働省の資料によれば、厚生年金受給者の平均年金月額は「14万4268円(令和2年度)」です。また、総務省の家計調査(家計収支編・2021年)によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の社会保障給付は平均「21万6519円」です。

これらを目安にした次の夫婦を例にして、遺族厚生年金の額を出してみましょう。

  • 夫(75歳)‥年金月額:約14万6000円(老齢厚生年金の報酬比例部分8万1000円)
  • 妻(70歳)‥年金月額:約7万円(老齢厚生年金の報酬比例部分5000円)

夫が亡くなった場合、妻は夫の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3である「6万750円」から、自身の老齢厚生年金の報酬比例部分を引いた「5万5750円」を遺族厚生年金として受け取ることができます。自身の老齢年金7万円と合わせると妻が受け取ることができる年金の月額は「12万5750円」となります。

妻が一人となった場合の生活費も見てみましょう。

前出の総務省の家計調査(家計収支編・2021年)より、65歳以上の単身無職世帯の消費支出は「13万2476円」となっています。この数字を使って、先ほどの妻の年金収入から消費支出を引くと「6726円の赤字」となります。

実際はこの他に税金や社会保険料などの非消費支出も引かれるので、さらに赤字は増えますが、遺族年金は非課税となっているためその部分の税金は抑えられます。

遺族年金を知って老後について考えよう

これまでのシミュレーション結果から、残された妻の生活は、遺族厚生年金によって少し支出を抑えれば成り立つ程度になることがイメージできたのではないでしょうか。

ただし、あくまでも平均的なデータを用いた一つの例なので、遺族厚生年金をもらえれば安心というわけではありません。それでも、女性は人生の最後に「おひとりさま」となる確率が高いので、遺族年金を知ることで不安が少なくなるといいと思います。

参考資料

石倉 博子