米株最高値更新とドル相場の落ち着きが世界株を牽引した1週間

先週(2017年2月13日-2月17日)の世界の株式市場は多くの市場で上昇しました。主要市場の週間騰落率は現地通貨ベースでTOPIXが▲0.1%、米S&P500が+1.5%、独DAXが+0.8%、上海総合が+0.2%でした。

株式市場を取り巻く環境は静かでした。イエレンFRB議長の議会証言では利上げに前向きな姿勢が示されましたがその影響は限定的でした。1月の米国の生産者物価、消費者物価がともに上昇する環境でしたが、米国の債券利回りにはほとんど影響が出ませんでした。為替市場では米ドルはまちまちに終わりました。対ユーロで若干上昇しましたが、足踏み感の出たユーロ圏のマクロ指標と春以降の欧州の政治日程を睨んでユーロが買われにくかった地合いでした。一方、米ドルは対円でわずかに下落しており対レアルなどでも下げています。

このような環境で株価を牽引したのはトランプ大統領が数週間で発表するとした「驚くべき」税制改革や財政政策への期待だと思われます。この材料は現時点では期待先行でやや手詰まり感も出ていますが、そこにタイミングよくクラフト・ハインツのユニリーバへの買収提案やソフトバンクによるスプリントのTモバイルへの(部分)譲渡観測といった業界再編の材料が出てきました。この結果、米国株はほぼ万遍なく上昇して週を終えています。

欧州株は金融株が持ち直しユニリーバ効果も加わり上昇しました。またブラジル、香港、豪州、台湾などの株価も外部環境の落ち着きを受けて上昇していることが注目されます。

日本株は東芝やニコンの急落に目を奪われがちですが、ダイキン(6367)、NTT(9432)、ファーストリテイリング(9983)、ソフトバンク(9984)などの下落が大きく、軟調に終わりました。

アウトルック:米税制改革案を待つなか、世界景気の温度と注目企業の決算に注目

今週(2017年2月20日-2月24日)は、トランプ政権の税制改革への期待と業界再編期待が米国株相場を引き続き支えるものと予想されます。しかし経済政策の全体像が見えるまでは、米欧の景況感を測る2月のPMI指数や、ホーム・デポ、ウォルマート・ストアーズ、テスラ、BHPビリトン、TモバイルUSなどの決算が注目されそうです。

米国の税制改革と経済政策の骨子が見えると、次はその影響をミクロで織り込む作業が待っていることでしょう。特に日本、アジア、欧州では対米輸出依存度次第で銘柄によってさまざまな反応が出そうです。ネガティブなものも出てくると思いますが、金利・為替が落ち着いて世界経済がしっかり回復軌道を続けるのかどうかでそのインパクトも変わってくるでしょう。米追加利上げ接近観測をうまくこなしている現在の状況が継続できるか、注視しておきたいと思います。

椎名 則夫