景気回復初期は失業率が下がらない

一般の人は、景気と失業率は同じ物だと考えても良いかも知れません。しかし、景気の予想屋としては、失業率の動きは景気の動きに遅れるので、失業率を見て景気を判断するのは危険なことなのです。

不況期には、企業内にヒマな労働者が大勢います。特に日本は終身雇用制なので、不況でも正社員のクビが切れず、「社内失業者」を大勢抱えている企業も多いわけです。

そうした会社は、景気が回復を始めて生産が少しずつ増えてきても、社内失業者の尻を叩いて増産させれば良いので、新しく人を雇ったりしないわけですね。

景気が更に回復して、労働者が忙しくなっても、新しく社員を雇うよりは社員に残業させる事を優先する企業も多いでしょう。採用にはコストがかかりますし、次の不況期に正社員をクビにするのは容易ではありませんし、非正規労働者であっても出来ればクビにするのは避けたいですから。

景気が更に回復すると企業は採用をはじめますが、それでも失業率が下がるとは限りません。仕事を探しても見つからないと思って仕事探しを諦めていた人々が、仕事を探し始めるようになるからです。

失業者というのは、「仕事をしたいのに仕事が見つからない人」ではなく、「仕事を探しているのに仕事が見つかってない人」という定義で統計が作られているのです。したがって、景気が回復して仕事を探し始める人が増えると、失業者がむしろ増えてしまう、といった事も起きかねないわけです。