「相続人全員で共有する方法で遺産分割」という解決は適切なのか?

代償金は払えない。でも実家を売りたくない。それならば、相続人全員が法定相続分で共有するという方法がありますか?とご相談されることもあります。

もちろんこのような方法もありますが、一度「争族」になると、不動産の維持管理で将来の紛争の種を残す方法なので、実務上あまりお勧めはできません。

「うちは仲が良い相続人なので大丈夫」という場合でも、一度共有で相続したあとに、何かのきっかけで仲違いしてしまうと、共有物分割という手続中で「争族」問題が勃発することになってしまいますので、あまりお勧めはしていません。

争族が勃発する前に対策しておきたい。「家族信託」とは?

そもそも「信託」とは、財産を所有する方(委託者)が、ご自身の財産を、信頼できる方(受託者)に管理を託して名義を移し、受託者は、信託契約で設定した目的に従って、特定の人(受益者)のために運用する仕組みのことです。

「信託」というと、信託会社や信託銀行などが「受託者」となるいわゆる商事信託がイメージされますが、それもそのはず。「家族信託」は、平成19年の信託法改正により、民事信託の組成が可能となり、利用することができるようになった新しい仕組みなのです。

このように、正式な法律用語では、民事信託といいますが、信託会社や信託銀行が受託者となるのではなく、ご家族で民事信託を利用するイメージで、「家族信託」という言葉(登録商標です。)が生まれ、最近ではメディアでも度々耳にするようになるくらい普及してきました。

生前の相続対策といえば、「遺言」をイメージする方も多くいらっしゃると思いますが、「家族信託」は、遺言よりも設定方法次第で柔軟性が高く、相続対策の有力な手段のひとつとして今後さらに注目を集めていくでしょう。