ベンチマークに勝て

良い投資信託とは「ベンチマークに勝つ投信」だとよく言われます。

「ベンチマークに勝つ」というのは、投資信託の運用成績が運用する際の基準となる指標を上回ることです。たとえば、日本株のアクティブ投信があるとしましょう。アクティブ投信とは運用会社のファンドマネージャーが銘柄をうまく選んで運用する投信です。この投信のベンチマークを仮にTOPIXとすると、TOPIXの運用成績を上回れば良い投信と言われています。さすがプロのファンドマネージャーだ、というわけです。

この考え方はおおむね正しいと思います。しかし、個人投資家の目線に立つと、実はこれだけでは良い投信かどうか見極められないかもしれません。少し考えてみましょう。

ベンチマークに勝つことを求められているのはアクティブ投信

投信は多くの場合、基準となるベンチマークが定められます。そして、ベンチマークをなぞってベンチマークと同じ値動きを実現しようというものをパッシブ投信と言います。一方、ベンチマークより良いパフォーマンスを目指すものをアクティブ投信と言います。

アクティブ投信は、ベンチマークに勝つことを常に求められていることは既に述べました。そのためにプロのファンドマネージャーに対してパッシブ投信よりも高い運用報酬を投資家が払っているからです。

では、パッシブ投信ではどうでしょうか。パッシブ投信ではベンチマークのパフォーマンスを完璧にコピーしたパフォーマンスを求められています。したがって、パッシブ投信はベンチマークに勝とうと無理にしなくてもいいのです。その代り、運用報酬は低くてもいいということになります。

パッシブ投信は面白味がない、そう考える方も多いでしょう。しかし、それでいいのです。たとえば、個別の銘柄選別や有能なアクティブ投信運用者の選別はできないが、株という資産を持っておきたいという方には、相対的に運用コストが低いパッシブ投信がうってつけだからです。

ベンチマークに勝てば十分か?

話をアクティブ投信に戻しましょう。ベンチマークに勝っている投信なら「良い投信」なのかというポイントをもう少し考えてみます。

ここで考えるべきなのは、運用会社はどう儲けるのかということです。投信を買う方は買付時に手数料を負担することがありますが、最近はネット証券を中心にこうした手数料の発生しない(ノーロードと呼ばれます)ものが増えました。

しかし、投資家の方は信託報酬という名目で運用に対する報酬を運用会社に支払っています。これは投信の時価純資産に対して信託報酬を日割りで計算して控除していくのが一般的です。信託報酬の料率は、投信の時価純資産に対して一定率とするケースが多いと思います。

では、実際に運用会社の実入りを考えてみましょう。その投信に資金流入・流出がないとすると、保有資産の価値が上がれば、それに一定率を掛けた信託報酬の実額が増えますので運用会社はハッピーです。逆に、保有資産の価値が下がると、信託報酬の実額は減りますので運用会社はアンハッピーです。

個人投資家が投信に求めているのは中長期の絶対リターン

ちょっと待った、とお考えの方も多いのではないでしょうか。

ベンチマークが下がり、運用成績がベンチマークを下回れば、それだけ運用会社の報酬額は減ります。運用会社は何としてもベンチマークを上回ろうという気になります。

一方、ベンチマークが上昇し、運用成績がベンチマークを上回る時には運用会社の報酬額は最大化されます。当然これを目指してがんばると期待ができるでしょう。

ここで、ベンチマークは+10%上昇したが、運用はベンチマークに対して▲5%負けてしまい、結果として投信の純資産が+5%増えたケースを考えます。この場合、運用会社の信託報酬は増えるでしょうか? ベンチマークに負けているので信託報酬は増えてほしくない、というのが個人投資家の心情でしょう。しかし、現実にはこの場合、運用会社の受け取る信託報酬額は増えるのです。

アクティブ投信で必要なこと

いかがでしたでしょうか。現在の信託報酬の体系の下では、ベンチマークが上昇した時にはしっかりベンチマークに勝ってもらわないとアクティブ投信の投資家は浮かばれません。実績のあるアクティブ投信を選ぶのであれば、ぜひこのポイントをチェックしてください。

 

椎名 則夫