【ROUND 3】老後

持ち家vs賃貸の話において、忘れてはいけないのが老後の生活です。若い頃とは違う環境になると、住宅から受ける負担も変わるもの。体力も収入もなくなる老後では、体力がある若年時代や収入が多い壮年時代とは異なる視点で、住処の確保方法を考える必要があります。

費用負担、住みやすさの面で持ち家が安心

老後に安心できるのは、なんといっても持ち家です。仮に25歳で35年ローンを組んでいたなら、60歳で完済。固定資産税や修繕積立金、管理費といった出費は必要ですが、住宅ローン返済中よりは経済的な負担が大きく低減します。

一方の賃貸は、何歳になっても何年住んでいても、一般的には家賃が大幅に安くなることはありません。もし居住者の収入が年金頼りになっているようなら、家賃の支払いに苦労するような状況になることも考えられます。

さらには、家賃負担を理由に低家賃の物件への引っ越しをしようとしても、現実問題として、高齢者は賃貸物件が借りにくくなる傾向があります。

全国宅地建物取引業協会連合会が2018年8月に行った調査によると、高齢者の民間賃貸住宅への斡旋状況について「行っていない」が24.8%、「消極的である」が11.5%。「積極的に行っている」がわずか7.6%であり、その他は「諸状況により判断している」に留まっています。高齢者への物件斡旋に後ろ向きな業者が実に3分の1以上となりました。このデータを見る限りは、高齢者が選べる物件の選択肢は大きく狭まりそうです。

また無事に斡旋を受けられたとしても、保証会社の審査に通らず賃貸できない場合もあります。国土交通省住宅局が平成28年10月に公表した「家賃債務保証の現状」によれば、家賃債務保証会社の審査状況において50代は審査に「通りやすい」とされたのが67.9%ですが、60代では49.1%、70代は22.6%と激減。この結果からも、高齢者の賃貸契約の困難さがわかります。

十分な準備があれば快適な賃貸生活の継続も可能

老後の住処の選択肢としては、シニア向け賃貸住宅をうたう介護施設や、年齢不問・保証人不要のUR賃貸が挙げられます。どちらも高齢者の入居を前提とした施設や住居であるため、無事入居できれば快適な生活を送れることでしょう。しかし現状では入居可能な物件の数はそれほど多くなく、競争率が非常に高いのが難点です。

老後に持ち家がない人の選択肢には、前述の物件や施設の他、老人ホームへの入居も考えられるでしょう。また前述の通り選べる物件は減るとはいえ、一般の賃貸住宅への入居がまったく不可能であるわけではありません。

どの選択肢を選ぶにせよ、老後の住宅確保に向けた準備は若いうちから進めておく必要があるといえるでしょう。逆の見方をすれば、十分な備えさえしていれば、老後も賃貸の身軽さを維持できるともいえます。