「フル生産に見合う需要量」があるか否かが重要

カルテルが崩壊して産油国がフル生産を開始したとしても、原油価格が暴落するとは限りません。需要が強ければ、価格が少し下がったところで需要と供給が一致するかもしれないからです。

景気回復で需要が拡大しているという可能性はあるでしょう。中国のバブル崩壊が懸念されていますが、それさえなければ需要は結構強いかもしれません。

一方で、地球温暖化への懸念から化石燃料には長期的に逆風が予想されていて、それが化石燃料への新規投資を抑制している可能性が気になります。筆者は業界事情に詳しくありませんが、想像に難くないでしょう。

そうだとすると、最近しばらく新規油田が開発されておらず、世界的な原油の生産能力が落ちているかもしれません。あるいは、世界的な石炭の生産能力が落ちているために石炭不足を原油で補おうという発電所が増えているかもしれません。

そうした動きが現在すでに生じているか否かを筆者は知りませんが、将来的にはそうしたことが起きる可能性は十分考えられるでしょうから、原油を多めに確保しておきたいという需要者は意外と多いかもしれません。

今後の原油価格について考える際には、様々な可能性に注目して行きたいですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

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塚崎 公義