日本では2016年10-12月期の決算発表が本格化しつつありますが、今回の注目点の1つとなりそうなのが「中国の景気回復」というテーマです。今回は、以下の3つの記事から中国の景気実態、中国関連銘柄、米中関係の影響などについて考えてみたいと思います。

2016年10-12月期の中国GDP成長率は市場予想を上回る

2017年1月20日、日本時間で午前11時の株式市場取引時間中に、中国の2016年10-12月期の実質GDP成長率が発表されました。

2016年通年の実質GDP成長率は前年比6.7%と2015年よりも0.2%低く、26年ぶりの低水準となりました。ただ、10-12月期の成長率は事前の市場予想を若干上回ったことから、20日の東京市場ではファナック(6954)、コマツ(6301)、ダイキン(6367)などの中国関連株は買われています。

さて、その中国経済ですが、2016年10-12月期実質GDP成長率の内訳を見ると、「第3次産業が前年同期比+8.3%と第2次産業の同+6.1%を上回る伸びとなった」ことが注目されます。重工業ではなく、サービス業等の第3次産業が中国の成長ドライバーにシフトしていることが伺えます。

また、この記事で指摘されているように、中国の景気の実態をより正確に表すものとして注目されている李克強指数も、2016年後半から顕著な回復を示していることも注目されます。

出所:中国の10-12月期実質GDP成長率と今後の展望(アセットマネジメントOne)

決算で注目したい中国関連企業

こうした中国の景気動向を勘案すると、これから始まる日本の決算でも中国関連企業の動向は要注目ということになります。

実際、1月23日にトップバッターで決算を発表した安川電機(6506)は、決算資料の中で「ACサーボは、中国市場を中心にスマートフォンや自動車関連での旺盛な設備投資需要により堅調」、また「汎用インバータは、中国の輸出関連市場などで持ち直す動きが見られる」などと中国市場の回復に言及しています。

こうした動きが他社へも広がるのか、この記事で指摘されている「ファナック(6954)、三菱電機(6503)、オムロン(6645)、日立建機(6305)、牧野フライス(6135)」といった中国の設備投資関連企業の決算発表にも注目していきたいと思います。

出所:中国関連株を見直し(楽天証券)

米中対立に過度な懸念は不要?

これまで述べてきたように、中国の実態経済が回復傾向にあることは間違いないようですが、今後気になるのは米国との貿易摩擦の高まりです。とはいえ、中国の実態はトランプ大統領の指摘とはやや異なります。

まず、トランプ氏は、中国は人民元安を利用し米国に対して不当に輸出攻勢をかけていると言いますが、足元の中国の輸出は停滞しています。この記事によると、中国税関総署が2017年1月13日に発表した2016年12月のドル建て貿易統計では輸出は前年同月比6.1%減と落ち込んでいるのです。

また、為替レートについても、この記事にあるように「中国当局の為替政策は人民元安進行の抑制に努める姿勢」となっており、トランプ氏に言われなくても元安から元高方向へ政策の舵を切っているようです。

というのは、一段の元安は中国国内から海外への資金流出(キャピタルフライ)の加速を招く可能性があり、為替政策にはそれを防ぐという意図もあると推察されます。つまり、為替政策に関してはアメリカと中国は対立関係とはならないと考えられます。

いずれにせよ、米国から中国への圧力が続く可能性は高いと見られますが、意外に深刻な対立には至らない、今回の為替のようなケースもあることにも留意したいと思います。

出所:トランプ氏就任後の中国人民元の動向を占う(ピクテ投信投資顧問)

 

LIMO編集部