厚生労働省の資料(※1)によると、2020年時点で65歳以上の認知症患者は約600万人。2025年には700万人に増え、実に高齢者の5人に1人が認知症の人になるとも予想されています。

高齢者の単独世帯数も増えるいま。「ひとり暮らしの認知症の人」が増えることは想像にたやすいでしょう。実は、筆者(LIMO編集部員)の実母(79歳)がまさにそれ。近居介護は5年目に突入しました。

「介護を通じて、人間力と忍耐力が飛躍的に上がりました!」なんて言ってみたいところですが、実はそうでもなくて。母の認知症の緩やかな進行とともに、筆者に課されるタスクの難易度も上がっていくのでした。

【関連記事】年収400万円台「いわゆるふつうの世帯」の貯蓄平均

「もしや家族が認知症?」と感じたら

コロナ前から在宅勤務だった筆者は、母の認知症の進行をきっかけに仕事場を自宅から実家の2階に移します。限られた時間ですが、適度な距離で「見守り」できる恵まれた環境にあることは確かです。

思えばこれは認知症の前兆だったのか……

物忘れがひどくなったことをきっかけに認知症を疑い、病院受診に繋がるケースは多いでしょう。母の場合は度重なる問題行動でした。過去を振り返ると、「あれが認知症の前兆だったのか?」と思う症状がいくつかあります。

もちろん人によって差はあります。以下は、あくまでも私の母の例です。

  1. 冷蔵庫が傷んだ食料でいっぱい!
  2. ゴミの分別を間違えることが増えた
  3. 銀行の窓口で、連日、不要な大金を下ろす
  4. 疎遠になっていた親戚に用事もないのに突然電話する
  5. 思い通りにならないと娘に怒鳴り散らす
  6. 不機嫌になり、一言も口をきかなくなる

「物忘れ」そのものではないが、周囲の違和感や本人の困り感が増えたことで、受診・診断に繋がったわけです。こうした症状が「認知症以外の疾患」から起こっている場合も大いにあり得ますから、不安や困り感を覚えた場合は、迷わず医師の診察を受けてください。

1,2は、衛生面や整理整頓に関わることですが、本人を頭ごなしに責めるのはできるだけ避けたいところ。冷蔵庫の中身は「こっそり片づける」、ゴミ分別は「一緒にやる」が、今の筆者の基本です。

また、本人のプライドを守ることを優先し、その結果5,6のような「ヒリヒリ感」のある空気を避けることを心掛けています。

3~6は、お金や人間関係が絡むため、比較的周囲が気づきやすいかもしれません。家族に対する攻撃的な言動や、抑うつ状態が目立つ場合は、介護する側のメンタルにも十分気を使う必要があります。

大学病院などの大きな医療機関ではなく、小規模のメンタルクリニックなどであれば、付き添う家族のケアまで柔軟な対応をしてくれるケースが多い印象です。まずは信頼できる主治医と巡り合うことが大切です。