認知症の人の「お金」の問題~我が家の場合~

ここからは、普段の暮らしで筆者が頭を抱えていることを、「お金」と「家」の2つに絞ってお話ししましょう。

認知症の人の「金銭管理」

認知症の人が暮らす上で、最大の難関となるのはやはりお金の管理でしょう。我が家の場合、慎ましい生活を好む母が、ほぼ隔日のペースで銀行の窓口に通い、そのたびに10万円を引き出していたことが受診の決定的なきっかけでした。

金融機関に認知症であることを知られると、判断能力が十分ではないとみなされ「口座が凍結される」可能性があります。本人や家族であっても預金を引き出すことができなくなるのです。それは困る……。

ただし、金融機関によっては、入院や介護施設費用との請求書など「お金が必要な理由が分かる書類」などを提示することで、相談に応じてくれる場合もあるようです(※2)。とはいえ、普段利用している銀行に「おたくは相談に乗ってくれますか?」と聞くのも勇気が要りますね。

筆者の知人(同じく認知症介護中)は、代理人用のキャッシュカードを持つ、まとまった現金を自宅の金庫に置いておくといった工夫をしているようです。

ハードルが高い「成年後見人制度」

家族信託・成年後見人制度などの方法も検討しました。まず、家族信託は「認知症になる前」に行う必要があるため対象外。成年後見人制度は筆者にとっては気軽に検討できる制度とはいえませんでした。

成年後見人制度を使うためには家庭裁判所に申し立てが必要で、時間もコストもかかります。

また、親族以外の人が後見人に選ばれる可能性があること、そして「本人が判断能力を回復して裁判所取り消し審判を受けない限り、本人が亡くなるまで成年後見人制度をやめることができない」点に不安を覚えました。

さて我が家はどんな対策をしていくべきなのか……。