【賃貸の退去トラブル】民法改正で明確になった費用負担等のルール
さて、話を敷金清算に戻しましょう。
一昔前とは異なり、現在は敷金を利用して退去時のリフォームを行ってはならないことになっています。このルールは昨年の民法改正で明確になりました。
民法第621条を要約すると、「賃貸中に借主の責任で部屋を傷つけた場合には、借主は自分の責任で直す必要があるが、通常の磨耗や経年劣化については借主の負担で原状回復することができない」と明文化されています。
また、国土国交省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」では、経年劣化による損耗と入居者の負担部分が明確になっています。
たとえば、下の図表1はオーナーが家賃として経年劣化の部分をすでに回収している範囲と、入居者の不注意によって破損した部分の責任範囲について国交省が示しているものです。
もう少しわかりやすく、壁紙の張り替えを例にして解説しましょう。
国交省のガイドラインでは、壁紙の耐用年数は6年となっていて、入居者とオーナーの負担割合を下のようなグラフで定めています。
縦軸がオーナーの負担割合となっており、この表では「6年が経過するとオーナーが全額負担する」ということを表しています。
つまり、6年以上住んでいれば、たとえ入居者が故意・過失でクロスを傷つけてしまったとしても、入居者の負担は一切発生しません。6年が過ぎると、減価償却がすでに済んでいるという考え方になるのです。